gendairon.jpg「大国間競争時代の安全保障」が副題。ロシアのウクライナ侵略から1年――。冷戦期の協調的な国際環境は消滅し、国家によらないテロ等に対する安全保障でもない、大国間の競争が復活、世界の安全保障環境の激変をもたらしている。そのなかでの「安全保障とはいかなるものか」「戦略とは何か」という問題に真正面から発言している。

「戦略は目的・方法・手段の組み合わせ」「安全保障分野における戦略は、戦争を回避することを目指すべきであって、戦争に勝利することそれ自体ではない」「安全保障分野においては、安全保障戦略の上位概念としての『大戦略』を必要とする。軍事力だけでなく、外交や経済政策なども包含して、目的・手段・方法の組み合わせを示す国全体の安全保障戦略である。防衛戦略や外交戦略はこの大戦略の下位戦略となる。その上で、『セオリー・オブ・ビクトリー』や具体的な作戦計画が作成される(アメリカの冷戦期の大戦略は封じ込め戦略)」「具体的な目的や手段、リソース配分の優先順位が示されなければ、戦略文書であっても戦略とはいえない」「『現状変更』を図るのが中国であれば、『現状維持』が日本の大戦略となる。防衛力はそのための手段として用いられる」とし、「戦略は、『優先順位の芸術』」と指摘する。

「大国間競争時代の戦略上の課題」として、パワーバランスの変化、米国の「シェイプ・アンド・ヘッジ」の変更を余儀なくされる現状を示す。社会システムと地勢戦略面での大変化が述べられる。また日米中の軍事バランスの変化、日本の脅威との関係を切り離した「基盤的防衛力」の時代から、変化が余儀なくされる現状を明らかにしている。

そして、「現状維持」を実現するための防衛戦略として、ネットアセスメントや将来戦に関するシナリオプランニングを踏まえ、「統合海洋縦深防衛戦略」を提唱する。宇宙・サイバー・電磁波能力と陸・海・空の対艦攻撃能力を統合的に整備し、中国の海上制圧を阻止することで、現状維持を達成しようとするものであると言う。「海洋によって離隔されている以上、仮に抑止が破られて有事になったとしても、戦況を海上で膠着させることができれば目的は達成できるのである」と指摘する。そして「ただこれは、中国との有事が不可避であるという立場に基づく議論ではない」と述べている。戦争にならないことこそが最重要の大戦略であるからだ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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