リベラル再生.jpg

3.11の衝撃と安倍政権の一年――。「保守に品格が求められるように、リベラルには歴史を前に進める矜持が不可欠です。貧相で矮小なリベラルであってはならない。リベラルであれ保守であれ、それぞれの立ち位置からどういう次代のシナリオが描けるのか。ある問題に立ち向かうため、冷静に議論できる磁場を構築していくことが、知の役割であり、我々の務めだと思う」――。

問題にしているのは、21世紀を主導するビジョンも構想も描けず、思考停止状態の日本だ。世界の潮流から取り残された「内向する日本」。「株価が上がってめでたい」という内輪の祭に興じ、「近隣の国にはなめられるな」という次元での安手のナショナリズムに吸い込まれた思考停止、鬱々とする日本だ。

なぜこの国が簡単に「国家主義への誘惑」に吸い込まれるのか。なぜ古い高度成長志向型経済観しかもてないのか。寺島さんは「近代を正視せよ」「世界の潮流に気付け」といい、対談の中で中島岳志さんは「リベラルとは近代の毒をも含めて、そこを踏み固めて前に進むこだわりだ」という。「構造的矛盾を見抜き、創造的未来へと運動論に高めていく視座が求められる。それはリベラル再生への探求だ。私は単なる時代の解説者などではいられない」と寺島さんはいう。


本が好き、悪口言うのはもっと好き.JPG

発刊されて十数年、90年代前半に書かれた評論集。

とにかく切れ味は桁外れ。見せかけの権威などダメなものはダメ、中途半端で研究不足のものはスパッと斬り捨てる。深い。

李白と杜甫を描いた「ネアカ李白とネクラ杜甫」や「支那はわるいことばだろうか」「新聞醜悪録」など、選ばれた評論はいずれも凄いが、ユーモアと温かさがある。

 「面白い」とは面の前がパッと明るくなる、開けるということのようだが、本当に面白い。それが、いつまでも残る。


人口減少社会という希望.JPG

経済成長、拡大路線をひたすら走ってきた単線的、一本道の日本。しかし今、ポスト成長、成熟化、定常化の時代に入ったことを認識し、「(単線ではなく)根底にある自然観や生命観、人間観とともに、また実現されるべき"豊かさ"のビジョンとともに、複数のものが存在する」という視点に立って、意識変革、社会の転換を図ろう――それはローカルな地域に根ざしたコミュニティ経済の生成と「地球倫理」とも呼ぶべき価値原理の確立だ。人口減少社会は、そうした意味からチャンスであり、希望である。「地域からの離陸」の時代であった高度成長期とは反対に、人口減少社会は「地域への着陸」の時代になっていく。それはコミュニティや自然への着陸でもある。そう広井さんはいう。

グローバルな競争のなかで、"強い国""猛々しい国"をめざしがちだが、じつは社会の底流では、"安らかな国""安心・安定の国"への志向が確実に始まっている。「人間―自然の切断」「帰納的・合理的な要素還元主義」――そこから生じた工業化・市場化。アトミズム的な社会観ではなく、多様性(生き方も都市それぞれも多様性を評価)、関係性(人間と自然、個人とコミュニティ社会)、幸福(福祉)思想を重視する。それを重層的に「ポスト成長時代の価値と幸福」「コミュニティ経済の生成と展開」「ローカル化が日本を救う」「情報とコミュニティの進化(つなぐこと)」「鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想」「緑の福祉国家」「人間の顔をした環境都市」「もうひとつの科学」「日本の福祉思想――喪失と再構築」など、意欲的に提示している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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