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槍働きが生きていた慶長から150年が経った宝暦の、最大の敵は貧しさだ。その敵と戦いうるのは、死と寄り添う武家しかありえない。己の死に場処は御馬廻りではなく、藩札掛にあると信じた――。


カネも気力もなくなった東北の極貧の小藩の経済の立て直しに挑む家老・梶原清明と、それを助ける藩札万指南の奥脇抄一郎。鬼となることを覚悟する清明。


「己の軀を死の淵に投げ出すことで清明は鬼になる。だから常に、一人でいなければならない。(護衛に囲まれていては、清明は鬼になれないのだ)この男は執政に就いてからずっと、死と生の際を歩み続けている」「誰よりも鬼には向かぬ者が、誰よりも厳然と鬼をやっている」「自分の父に死を命じ、多くの藩士の禄を剥ぎ取り、そして国の礎である百姓の血を流させた」・・・・・・。


鬼となって極貧の国を救う――。覚悟、命懸けで初めて事は成ずる。命に迫る素晴らしい直木賞候補作。同じ直木賞候補作に万城目学氏の「悟浄出立」があるが、これも「悟浄出立」「父司馬遷」など読みごたえがある。


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パリ経済学校教授のトマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」が、世界的なベストセラーになっている。これを「60分でわかる『21世紀の資本』のポイント」として、池田信夫さんが整理してくれている。


所得格差の拡大は重要課題だが、経済成長には一定の格差は不可避の部分があり、ピケティは「成長の持続にはインセンティブが必要で格差も生まれる」「過去200年の成長と富の歴史を見ると、資本の収益は一国の成長率を上回る。労働収入より資産からの収入が伸びる」「資本収益率rが成長率gを上回り、今後もその傾向が続く(資本主義の根本矛盾r>gに集約)」――。池田さんは、「ピケティは"資本"を"資産"と同じ意味に使い、賃金以外のすべての所得を"資本所得"としている」という。


格差拡大、中間層の脱落は世界的な問題だ。しかし、先進国は所得格差が拡大しているが、世界全体では新興国の工業化で縮小している。またコンピュータなどテクノロジーの変化が格差拡大の要因に間違いなくなっている。ピケティは「グローバルな累進資本課税と、世界の政府による金融情報の共有」「中間層の労働収入への課税を減らして、高所得者に対する資産課税の拡大」などを提案するが、見通しは暗い。「日本の格差は、米のように上位1%と残り99%の格差ではなく、正社員と非正社員の格差」(池田)だ。グローバル化のなかで、各国がそれぞれどう取り組むか。池田さんの解説はありがたい。


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話題の本だが、絶妙で面白く、陰影も心理も、人間の業も描かれ、迫力満点。唸ってしまう。英仏で数々のミステリー大賞等を受賞しているピエール・ルメートルのカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第2作。訳もいい。


若く美しい女性の誘拐・監禁事件から始まり、猟奇的・異常な連続殺人事件が起きる。カミーユ警部が迫る事件の真相は深く、暗く、重い。ドンデン返しなどということをはるかに越え、真相に迫るには三重四重の重い扉がある。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任、公明党前代表。元国土交通大臣、元水循環担当大臣。

現在、衆議院議員、党全国議員団会議議長、東京第12総支部長、首都直下地震対策本部総合本部長、現代中国研究会顧問など。

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