「エイジノミクス」で日本は蘇る.jpg「高齢社会の成長戦略」が副題。人口減少・高齢社会が急速に進む日本。けっして暗くはない。高齢化に対応するイノベーションを進め、従来の規制を打ち破って展開すれば、需要もGDPも伸びる。高齢者向けイノベーションの経済学・エイジノミックスで日本は蘇ることができると提唱する。

高齢化が進む社会は、イノベーションの宝庫である。「病弱な人のための財・サービスのイノベーション(遠隔医療サービス、介護施設でのロボット活用、創薬・再生医療、高齢者向け住宅)」「健康な人のための財・サービスのイノベーション(自動運転、IoT・AI、旅行やデパートやフィットネスや学習などシニア向けサービス、シェアリングエコノミー)」そして「病弱な人のための制度のイノベーション(遠隔医療サービス、混合介護、見守りと市民後見)」「健康な人のための制度のイノベーション(シェアリングエコノミー、ハローワークやシルバー人材センター、就労モザイク)」の4つに分類、整理し、具体的に現場で今起きていること、挑戦していること、すでに実り更に進んでいることを示す。

「老いの期間を明るく過ごす――創薬とロボティクス」「高齢者の能力を拡張する――人工知能とモノのインターネット」は高橋琢磨氏、「介護は減らせる――脱『要介護』で稼ぐケア市場」「労働力を移動させる――誰もが働き続けられる社会」は高橋氏と岡本憲之氏が現状と方向性、戦略を詳述する。まさに今、踏み出す時だ。


LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略.jpg多くの人が100年ライフを生きる時代が来る。2050年までには、日本の100歳以上の人口は100万人を超え、2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される。世界全体が長寿時代に進んでいく。過去のモデルは役に立たない。長寿化時代には人生の設計と時間の使い方を根本から見直す必要がある。長寿を厄災でなく恩恵にする人生戦略だ。

今までは「教育→仕事→引退」の3ステージの人生だ。年金・老後の蓄え・住宅ローンなどの有形の資産に議論が集中するが、余暇時間の使い方、パートナー同士の深い関わり合い、友人関係のネットワーク、学習とスキルアップなどの無形の資産が重要となる。変身できるマルチステージの人生だ。レクリエーション(娯楽)を労費するのではなく、自己のリ・クリエーション(再創造)に振り向けることだ。快適なぬるま湯の外に出て行き、未来につながる道を思考する「成長思考」の持ち主になることだ。教育機関も企業もその大きな動きを課題として受け止め、前に進める必要がある。企業は「仕事と家庭」との関係に留意し、「年齢を基準にする」ことをやめ、まさに「働き方改革」に力を注ぐことになる。政府が取り組む課題は複雑・多岐、既存の分類は成り立たなくなる。

人生に単線型ではない新しいステージが現われる。選択肢を狭めず幅広い針路を検討する「エクスプローラー(探検者)」、自由と柔軟性を重んじて小ビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」、仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」など選択肢は増える。そのためのエネルギー再充填と自己再創造の移行期間の確保と環境整備が重要となる。働き方改革を越えて、生き方改革という命題が横たわる。

ロンドン・ビジネススクール教授の著名な2人が訴えかける。


ユニオンジャックの矢.jpg「パクス・ブリタニカ」といわれた英国の栄光の時代は過ぎ去り、第一次世界大戦を経て、世界の覇権は米国へと移っていった。そして経済力・産業力においても世界的地位は低下し、最近はEU離脱を巡って迷走が危惧されている。しかし、英国は「実にしたたか」であり、歴史的にも「引き際の魔術師」であった。今もその存在感、影響力は隠然たるものがある。「英国はグレートブリテン島として捉えるのではなく、そのグローバル・ネットワークの中で捉えるべきである。それがソフトパワーとネットワーク力による『ユニオンジャックの矢』だ」という。「『ユニオンジャックの矢』は『シティ』に世界各国のマネーを呼び込み、世界の開発や産業に関する情報を『シティ』に集中していく仕組みだ」「ロンドン、ドバイ、ベンガル―ル、シンガポール、シドニーと伸びる直線だ」とその構造を提示する。

さらに、英国にある「厚み」「したたかさ」がどこから生まれたかを歴史的に分析する。「デモクラシー」と「ヒューマニズム」――。「自分が圧倒的に優位だという状況で示すヒューマニズム、やさしさ、思いやり――その一方で、自分を凌駕し、否定する可能性のある存在に示す猜疑心、嫉妬心、敵愾心、・・・・・・とりわけアングロサクソンといわれるこの数百年の世界史を主導してきた人たちの思考に交錯する『抑圧的寛容』・・・・・・」「試練の時こそ、つくり上げてきたネットワーク、蓄積、資産がものをいう。民族の英知、ポテンシャルとはそういうものである」「イギリス紳士のいぶし銀のようなユーモア感覚、現実と対話しながら粘り強く回答を求めていく意思。理念に走るのではなく、ほどよく妥協していく柔軟さ、決して深刻にならず、歴史の中から身につけてきた知恵で軽妙に落としどころを見出すしなやかさ、それがイギリス人のスピリットだといえよう」・・・・・・。対欧州、対植民地、対米をはじめとし、世界史の中心として格闘してきた英国の英知とネットワークの厚みが、混迷する世界のなかでどう発揮されるか、それは日本の課題でもある。


天下一の軽口男  木下昌輝著.jpg江戸時代前期の上方落語の祖・米沢彦八(?―1714年)を描いた小説。江戸の鹿野武左衛門や京都の露の五郎兵衛と並ぶ三大辻咄の米沢彦八。難波村の漬物屋に生まれて、生玉神社の小屋で、当世仕方物真似の看板の下、俄か大名で笑いを取る。「軽口御前男」や「軽口大矢教」など笑話集を出す。江戸と京都と大阪では、「笑い」が違うし、時の流れとともに形式も異なるが、街の盛場や祭礼の場で道ゆく庶民相手に「笑い」をとる辻咄が根源であることがよくわかる。

「儂はただ人を救いたいだけなんや。人笑わすのは、出世のためでも名声のためでもない」。天下一のお伽衆をめざした彦八だが、時代にもまれながら生まれた「辻咄」という、純粋な笑い話だけで銭を稼ぐ、辻芸人の世界のど真ん中に踊り出ていく。笑いを志し、笑いを極めようとし、笑いを大衆文化にした男の挫折と栄光。


いのちの証言.jpg副題は「ナチスの時代を生き延びたユダヤ人と日本人」――。ベルリン在住の作家・六草いちかさんが、あの凄惨な時代を奇跡的に生き延びたユダヤ人と、杉原千畝(リトアニア領事代理)のようにそれを助けた日本人を丹念に取材し調べあげたもの。証言は生々しく、壮絶。「生き延びたのは偶然の積み重ね」「生死を分けた一瞬に自ら死を賭した捨て身の人がいてくれた」「密かにユダヤ人を助けるドイツ人や在独の日本人」・・・・・・。狂気に同調してしまう人間、人間性とは・・・・・・。問いは重く苦しい。

1933年ヒトラー内閣成立、ユダヤ人の公職からの追放、焚書事件、反ユダヤ運動の広がり。1935年ニュルンベルク法制定によってユダヤ人の人権が公然と剥奪。1938年11月の「水晶の夜」事件発生、町全体がユダヤ人憎悪の危険状態に突入。1939年ドイツのポーランド侵攻・第二次世界大戦。1941年ベルリンからの強制収容所行き列車移送開始、ユダヤ人の出国禁止。1942年7月ベルリンからアウシュヴィッツ絶滅収容所行き列車移送開始。1943年2月、ベルリン市内残留ユダヤ人を残らずアウシュヴィッツへ送る「工場作戦」実施(ベルリンからユダヤ人一掃作戦)。1945年4月、ソ連軍のベルリン砲撃。そして5月にドイツ降伏。

ベルリンにはかつて16万人以上のユダヤ人が暮らしていたが、終戦までこの町で生き延びたのはわずか6千人だった。日独が同盟関係にあったなかでユダヤ人を救ったベルリンの日本大使館、古賀守、近衛秀麿、藤村義朗、杉原千畝、毛利誠子・・・・・・。多くの日本人が描かれている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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