キャッシュレス覇権戦争  岩田昭男著.jpgすさまじい囲い込み、キャッシュレス覇権戦争の大嵐が吹いている。今再び始まっている「100億円還元、ペイペイ祭り」「消費税増税にともなうポイント還元」などは最も身近なものだが、世界全体は「GAFAがすべてを支配する」「米中巨大資本の覇権争い」「狙われる個人情報」「キャッシュレス先進国に躍り出る中国」「信用スコアの衝撃」「信用格差社会」「丸裸にされる消費者、データ監視社会」「どう自分を守るか」の大攻防戦の渦中にある。クレジットカード、電子マネー、キャッシュレス化を30年追い続けた著者の率直な指摘だ。

「VISAなどクレジットカード、Suicaなどの電子マネーなど、キャッシュレス決済にペイペイの100億円還元祭りなどが加わった。しかし注目を浴びたのは高額商品の売れる家電量販店ばかりだった」「LINEペイ、楽天ペイ、ドコモのd払い、アマゾンペイ、ペイペイ、アリペイなどQRコード決済は百花繚乱で激しい囲い込みに入った」「国で進められるキャッシュレス化。2015年の日本は18.4%、韓国89%、中国60%、アメリカ45%」「国でのポイント還元とカード会社等の反発」「キャッシュレス社会はアメリカのVISAから始まった」「クレジットスコアとサブプライムローン、リーマンショックの密接な関係」「昨年11月、1日で3兆を売り上げたアリババのネット通販」「爆発的に普及した中国のスマホ、それに乗ったQRコード決済アリペイ、ウィーチャットペイ」「アメリカのクレジットスコアを"進化"させたゴマ信用とスコアの高さのインセンティブ、信用スコアと監視社会・中国」「2017年からスタートしたJスコアの6ランク」「信用スコアに参入するソフトバンク・ヤフーのペイペイ、NTTドコモのドコモレンディングプラットフォーム」「"データ経済圏"を確立したGAFA」「度重なるフェイスブックの情報流出問題」「米IT企業の行為を阻止する規制――欧州のGDPRという反撃」「個人情報保護に動くアップル」「監視社会と監視ビジネス」・・・・・・。

「自分の情報は自分で守る時代へ」――便利であると同時に、安心できるキャッシュレス決済をどう実現していくか、ドタバタしないで、考え抜いて。


ふたりぐらし.jpg時代に取り残された映写技師の信好。ほとんど稼ぎはなく、脚本や評論も書くが採用されない。妻の紗弓が病院の看護師として働いて生計を支えている。互いを思いやる心、優しさ、静かな生活――。喧騒とはほど遠い、愛に包まれた静謐な時間がゆっくり流れ、二人の結び付きをより強くしていく。日常には、疑心も湧くし、無味無臭の嫉妬心や嘘、相手を覗く好奇心や罪悪感もあるが、それを整理し、小さくも乗り越えを繰り返すなかで「幸せ」を噛みしめていく。丁寧な筆致は絶妙で心持よい。

夫婦でなくてもいいが、人生はまず二人から形づくられるのではないかと思う。自他不二、心如工絵師、互いを思う優しさ。紗弓はズケズケと言い過ぎる母との確執をもち続けるが、教養と包容力をもつ父親に包み込まれる。この夫婦にも違う形の信頼と安心感がある。隣の泉タキ夫婦、信好がその下で働くこととなった岡田国男と結婚相手・大村百合、信好と母・テル・・・・・・。それぞれの二人の愛と信頼の形が挿入される。

「あなたいいひとだな」「ごめん、どうしても好き」「年を取れば、どんな諍いも娯楽になっちゃうんだから」――。二人を生きる、極めつきといえよう。


AIが変えるお金の未来.jpg金融と社会の10年後、20年後はどうなるか。AI、フィンテック、仮想通貨、ブロックチェーン、キャッシュレス社会・・・・・・。経済・社会は激変し、伝統的金融機関である銀行、証券、保険が業務や雇用の大変革を迫られる。フィンテック企業やプラットフォーム企業が全体を覆い、金融サービスを通じて集積されたビッグデータは、新たなビジネスを生む。フィンテックが導く新しい経済の本質は、個人データ争奪戦であり、それは機能不全の危険性をもつデリケートな社会でもあり、個人にとってもデータの漏洩、操られる社会への突入でもある。

「AIに分析される私たち(「信用スコア」「スコアレンディング」で顧客データが集まり、融資も値引き特典も)」「メガバンクを脅かすフィンテック(資金調達でもクラウドファンディング、仮想通貨。地銀の苦境、フィンテック・ベンチャーの発想とメガと地銀の協力・協業)」「ITが変える保険業界(AI・IoTのリスク予測分析が進み保険料が1人1人違ってくる。伝統的保険の終わり)」「仮想通貨狂騒曲(仮想通貨の価値の裏付けは?通貨でなく投機の対象?本命は情報管理できるブロックチェーン)」「キャッシュレス覇権(スウェーデンのスマホ決済アプリ"スウィッシュ"、企業間の顧客データ争奪戦、アリペイの世界進出とMUFG等の仮想通貨計画、日本のメガバンクのQRコード構想)」「国家が発行するデジタル通貨(慎重な日本、警戒しながら他国の出方をうかがう)」「フィンテックの『影』(データ漏洩リスク、欧州で進む法整備)」――。毎日新聞経済部が現場を歩き、不確実な金融の未来、社会の激変に挑戦した意欲的な著作。


お金の流れで読む日本と世界の未来.jpgウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並んで「世界3大投資家」と称されるジム・ロジャーズ。世界は今、大変化のなかにあり、その世界を実際に訪れ、自らの目で見ることだ。「これ以上知識を得ることはできないと思う瞬間まで、勉強する手を緩めないと決めて今日まできた」「成功する人は、決してあきらめない人である。特に投資をやっているとそうだ」という。「投資の哲学」が鮮明に出される。「人のアドバイスには耳を傾けるな」「学歴と成功は無関係だ」「正しく投資をすれば、金が勝手に金を生んでくれる」「大変化の波に乗り遅れるな。世界で起こる出来事のすべては、あなたの仕事が何であれ、最終的にあなたの人生に影響する」「誰も目をつけていないものをすぐさま買え」「"待つことができる"のは投資家の重要な才能の一つ」・・・・・・。

当然、AIの進化、フィンテック、キャッシュレス経済、ブロックチェーン技術の台頭等は視野の中心にある。そして世界各国を見る眼は、政治・経済に関わる者よりも、スピードと割り切り方が際立っている。「日本の未来――閉じた国は亡び、開いた国は栄える」「日本に投資するなら観光、農業、教育」「朝鮮半島はこれから"世界で最も刺激的な場所"になる」「南北の統一が進めば、韓国経済が抱える問題はすべて解決する」「私が北朝鮮に投資したいという理由」「長期的に見れば、中国の台頭は続く」「チャイナ・リスクは低下する出生率、広がる格差、急増する借金」「ロシア経済に注視せよ」――。日本と東アジア経済を中心に投資家らしく断定的に予見する。


1R1分34秒.jpg21歳のプロボクサーの「ぼく」。デビュー戦こそ初回KOを飾ったが、その後3敗1分。弱気になるし、考え過ぎて、愚痴とボヤきの毎日で、長年のトレーナーにも見捨てられる。そこにジムの先輩・ウメキチが指導につく。今までとは違うウメキチのユニークな指導に反発するが、引きずられていくのは、ボクシングへの愛着なのか宿業のようなものなのか。次の試合が組まれ、さすがプロボクシングの世界。過酷な減量、そのなかでのトレーニングは鬼気迫るものがある。

3日後に1ラウンド1分34秒、TKOで勝つ。その一点に全てが凝縮されて今日も「決意を30秒でうしないまたくり返す」。勝負に挑むプロボクサーの凄絶な世界とヤンチャな若者のエネルギー。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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