itimannenn.jpg「北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語」が副題。メディアでも紹介され話題となった北海道砂川市にある「いわた書店」が、2007年から始めた「一万円選書」――。当初は反響はなかったようだが2014年、テレビで紹介されるや一気にブレイク。放送3日後にはなんと555件の申し込みが来たという。ミソとなるのは「選書カルテ」。「これまで読んで印象に残っている20冊は」「これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったことは?」「一番したいことは何ですか?」などの問いに答えてもらって作るカルテ。それに基づいて一万円、10冊程度を選んで送るという。お客さんとのやりとりは何度も繰り返して行われる。熱意と配慮、想像力、これまでの読書量なくしてできないことだ。

「最近、面白い本はなんですか」と聞かれることは日常だが、「どんな本を読んだらいいですか」と、かつては多くの人に聞かれた。本を選ぶのは意外と難しいようだ。岩田さんの努力に心からの敬意と拍手を送りたい。

現実に選んで送った本が紹介されている。約90冊。読みたくなった本がいっぱいある。


22seikino.jpg「選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」が副題。データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザインを専門とする成田さん。イエール大学助教授であるとともに企業とも仕事をして、ファッションや広告などのおすすめアルゴリズムを開発している。こうしたアルゴリズムが公共政策領域、教育・医療等にも流れ始めている。AI の急進展、Web 3.0時代から今の選挙や政治、民主主義の状況を見ると、あまりにも異常であり大変化は免れない。その「異常を普通に」するために「民主主義更新のためのサバイバル・マニュアル」を提示する。「無意識データ民主主義の構想」だ。AI時代で中間管理職が整理されたり、税理士などの専門家が縮小を余儀なくされると指摘される。やがてしっかりしたアルゴリズムが出来上がれば、政治家は不要で、政策立案官僚は、淘汰されていく。22世紀まであと80年――。必ずしも荒唐無稽ではなく、むしろそうした方向であることを考えて、今後の選挙や政治を考えることもあり得ることだ。それ以上に、国家・社会の仕組みとテクノロジーの課題を考えるべきであろう。

「無数の民意データ源から意思決定を行うのはアルゴリズム。このアルゴリズムのデザインは、人々の民意データに加え、GDP ・失業率・学力達成度・健康寿命・ウェルビーイングといった成果指標データを組み合わせた目的関数を最適化するように作られる」「無意識民主主義は、①エビデンスに基づく目的発見②エビデンスに基づく政策立案、この2つを足すことになる」「人間政治家は徐々に滅び、市民の熱狂や怒りを受け止めるマスコットとしてネコとかゴキブリになる」というわけだ。また国家という観点から言えば、Web3デジタル国家は、既存の国家や社会から資産家たちが逃げ出していく未来という側面を持つ。タックス・ヘイブンとデモクラシー・ヘイブンだ。

「選挙なしの民主主義は可能だし、実は望ましい」「それが無意識民主主義であり、センサー民主主義、データ民主主義、アルゴリズム民主主義で、22世紀に向けた時間軸で取り組む運動だ」という。

少しだけ付け加えると、「民主主義は参加と責任のシステム」だ。この「参加」というのがまず難しい。そもそも「民意」というが、1人の人間の意見、考えそのものが千変万化、一瞬一瞬変化していくものであること。その統計学的なデータが果たして「民意」といえるものなのか。他国や他者についての考えもゆれ動き、それが社会を構成するという事。国家について言えば、国家統治において危機管理は大事な柱だが、AI ・データ・アルゴリズムがその役を担えるのか・・・・・・。これから50年、100年と、人類は自ら作ったテクノロジーとどう付き合うのか。


10funde.jpg「神曲」「源氏物語」「ツァラトゥストラ」「古事記」「資本論」など、12の名著を、斎藤哲也氏が2ページで紹介、古市憲寿氏が専門家と15ページ位で対談。NHKの「100分で名著」どころか「15ページで名著」だ。

「ダンテ『神曲』 原基晶」「紫式部『源氏物語』 大塚ひかり」「プルースト『失われた時を求めて』 高遠弘美」「アインシュタイン『相対性理論』 竹内薫」「ルソー『社会契約論』 東浩紀」「ニーチェ『ツァラトゥストラ』 武田青嗣」「ヒトラー『わが闘争』 佐藤卓己」「カミュ『ぺスト』 佐々木匠」「『古事記』 三浦佑之」「マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』 鴻巣友季子」「アダム・スミス『国富論』 野原慎司」「マルクス『資本論』 的場昭弘」――。率直に語っており、面白い。

 


kakugono.jpg吉田松陰の言葉を、まさに超訳で抽出している。相当読み込んでいないとできない仕業だと思う。

「誰よりも熱く、誰よりも冷静だった天才思想家」「素晴らしい戦略家だったが、ろくな計画も立てなかった吉田松陰。動けば道は開けると、黒船の甲板に乗り込んだ。突然の東洋人の訪問。無防備な侍が、法を犯し、命がけで、学ばせてくれと挑んでくる」「情熱家である一方、吉田松陰は大変な勉強家であった。旅をしながらでも、牢獄に入れられても、本を読み続けた」「教育は、知識だけを伝えても意味はない。教える者の生き方が、学ぶ者を感化して、初めてその成果が得られる」・・・・・・。

「歳月は齢と共にすたるれど崩れぬものは大和魂」「流れを変えるのは自分の行動」「最高の一文字は誠」「士は過なきを貴しとせず過を改むるを貴しと為す」「武士は日常から無駄なものを削り、精神を研ぎすました」「足並みが揃うのを待たず、自分から走りだせ」「かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂」「志は現状維持を否定する」「吉田松陰の感覚は『うまくいくかは知らないが、これをやらなければ何も始まらない』だった」「私は絶対こうするという思想を保てる精神状態は、ある意味で狂気です。その狂気を持っている人は幸せです」「知は行の本たり、行は知の実たり」「志のために行動する。そして志のために行動したからこそ、初めてその学問を理解できたと言える」「親思ふ心にまさる親心 けふのおとずれ何ときくらん」「まずは自分から熱くなること。自分から動き出すこと。吉田松陰は誰よりも熱くなりやすかった。その熱さに本気で付き合える人だけが、吉田松陰にとって友であり続けることができた」「物事を成就させる方法はただ一つ。それは覚悟することだ」「私は人を疑い続けて、うまくやるよりも、人を信じ続けて、馬鹿を見る男になりたい」「死して不朽の見込みあらばいつでも死ぬべし、生きて大業の見込みあらばいつでも生くべし」「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」・・・・・・。

そして吉田松陰はその生涯を30歳で閉じる。


ninngennbannen.jpg2008年のリーマン・ショックの頃から2011年の東日本大震災までの間、亡くなった有名人28人の輝ける時代と晩年を描く。いずれも記憶にある人たち。しかもドラマチックで振幅の大きい、個性的で生々しい起伏に富んだ人生だ。

高杉一郎や草森紳一は、作家・随筆家と本における壮絶な生き様を見せてくれる。川内康範の「生涯助ッ人」も凄まじい。チョモランマに挑んだ中村進、テレビ向きの「大ざっぱ」筑紫哲也。なぜかテレビに出て突然消えたバブルの娘・飯島愛、体操の遠藤幸雄とチェコのチャスラフスカ、ロック・ミュージシャンの忌野清志郎の「性的なのに清潔」。投身自殺した韓国の盧武鉉大統領、プロレスのリングでの事故死・三沢光晴、そして一人でつらく悲しい死を迎えた大原麗子。最後には皆に去られた山城新伍。

「引きこもり56年、晩年45年」のサリンジャー。生涯、反骨の「おばあさん」の北林谷栄ではあの「大誘拐」を再び見たくなった。文明の生態史観の梅棹忠夫の南極探検への望み。私の住む東京北区にも関係する「つかこうへいの祖国」、シャンソン歌手の石井好子もお嬢さんの域をはるかに超えている。梨元勝、池部良も亡くなって10年以上になる。岸惠子を包んだ「日本の男の気配」は洒落た言い方だ。

日本のプロ野球を変えた与那嶺要、コント55号の坂上二郎。それぞれの人の素晴らしさ、凄まじさが鮮やかに蘇り、迫ってくる。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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