諸法実相、如実知見――仏法哲学はそうした人間の「諦」(明らかにみる)、リキむことなき境地だと思う。過去、現在、未来――自らの選択、意志によってこの世に生を受けたのではなく、悪業を積みつつ生存する人間であることを諦観しながらも、「現在の行為と選択は、未来を変える可能性があるのだ」と述べる。
五木寛之さんはこの本の最後で、「意識と無意識の深いところになにか不安なものをかかえこんで、心のバランスが崩れ、いつも自分が安定していない感じがする」といい、子供の頃の体験を通して「運命は逆らいがたいものなのか。人はみずから運命を変えることができるのか。あの山中の闇のなかで、私を照らしてくれた月光のような光は、どこにあるのか。その未知の世界を求めつつ、手さぐりでいま私は生きている」と結んでいる。
「毎日を生きていくことのできるエネルギーを求めている」ともいう。