koto.jpg「人生の幕が下りる。近頃、そんなことをよく思う。・・・・・・今年(2015)から京都で暮らしている。何度か取材で訪れた京都だが、もう一度、じっくり見たくなった。古都の闇には生きる縁となる感銘がひそんでいる気がする。幕が下りるその前に見ておくべきものは、やはり見たいのだ(薪能)」「このエッセイの連載は、――幕が下りる、その前にとサブタイトルをつけた。幕が下りる前にしなければならないことがある(義仲寺)」とある。京都の街に潜んでいる人と歴史を探訪する実に味わい深い珠玉のエッセイ68篇。感動的。早く亡くなったことが残念に思われるが、その後出版された本を何冊も読んだゆえに、余計に死が惜しまれる。

「ふと、京を逃れて一騎駆けをした武将がいたことを思い出した。源平争乱の時代を切り裂く稲妻のように生きた木曽義仲だ。義仲のどこに魅かれるかと言えば、誰しも最後はひとりだ、という感慨ではないか(薪能)」「ゾシマ長老と法然」「漂泊の俳人尾崎放哉が見た京の空」「最澄と空海(比叡山)」「千利休始め、山上宗二、古田織部など名だたる茶人が非業の死を遂げたのはなぜだろうか(大徳寺)」「漱石の失恋」「龍馬暗殺」に始まる68篇は、いずれも味わい深い。「梶井基次郎の名作『檸檬』の舞台となった京都の書店・丸善、大爆発(檸檬)」「信長が定宿とした本能寺、比叡山と法華宗の戦いの中で本能寺の変を見る(本能寺)」「与謝蕪村の本当の寂しさ(蕪村)」「芹沢は尊攘派が没落した京都に取り残された。・・・・・・この時期まで芹沢が生きていれば、上洛を目指す天狗党に京で呼応しようとしただろう(芹沢鴨)」「山科に隠棲した大石(大石内蔵助の『狐火』)」「高山彦九郎の土下座」「禁門の変の埋火」「京都の島原と島原の乱(島原縁起)」「一休さんが復興した大徳寺(利休の気魄、一休の反骨)」「三条木屋町の『長浜ラーメン』」「西郷が亡くなる瞬間まで肌身離さず持っていた橋本左内の手紙(西郷の舵)」「紫式部の惑い」「庶民世界に根ざした龍馬の手紙」・・・・・・。

京都の街に潜む人間と歴史――7年も京都に住んでいたが何も見なかったなぁ、前ばかり見て走り回っていたなぁとつくづく思う。もったいない。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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