tugaru.jpg関ヶ原の戦から10年後の1610年、石田三成の3女・辰姫が津軽家に嫁ぐ。三成が処刑された後、豊臣秀吉の後室の高台院(北政所)に庇護されていたが、19歳で津軽信枚に嫁いだのだ。ところがその3年後、家康の養女・満天姫が正室として嫁いでくる。満天姫は福島正則の姉の子・正之に嫁いでいたが、正則によって廃嫡・死亡され、息子とともに実家に戻されていた。辰姫は上野国大館ヘ移るが、後の藩主となる長男を産む。関ヶ原から遠く離れた津軽の地で、三成の娘・辰姫と家康の養女である満天姫とが切り結ぶ。西軍の花と東軍の花の対決。女同士の嫉妬や競争心の醜い応酬と思いきや、全く違う戦国女性のキリリとした聡明さと忍耐強さ、矜持を持ったニ人の姿が描かれる。男どもには及びもつかぬ女性の靭さに感服する。

「されど、家康殿は朝廷をわが思いのままにしようとされておる。・・・・・・源吾は言葉を発することができなかった。大阪の陣は家康が豊臣家を滅ぼそうと始めた戦だと思っていた。だが、高台院の話を聞けば、むしろ豊臣家から仕掛けた戦だという」「それにしても、津軽の花は見事に咲いたようじゃな。高台院はくっくっと楽しげに笑った」「世間から見れば憎み合い、謗り合う仲であるはずでした。しかし、わたくしにとって、あなたは生きる支えでした。あなたがいなければ、わたくしは自らのなすべきことを何一つなせなかったと思います」「わたくしも同じでございます。満天姫様に一度、お会いした時から、わたくしは自らを磨こうと思いました。まっすぐの道を歩もうと心に定めました。もし、そうでなければ、満天姫様に笑われる。その思いがわたくしを導いてきました」・・・・・・。縁は関ヶ原の戦いから始まり、津軽の地で、石田三成の娘として負けられない戦と、徳川家康の養女として勝たねばならない戦が繰り広げられたのだ。「守らなければならないものを守ろうとして」の戦だ。

本書は、このほかに「鳳凰記」「虎狼なり」「鷹、翔ける」の短編が収められている。「鳳凰記」は、後陽成天皇を守ろうとした豊臣秀吉の精神、大阪冬の陣に臨む淀君の姿が描かれる。「虎狼なり」は、関ヶ原の戦いに挑む石田三成の思いもよらぬ戦略と安国寺恵瓊。「鷹、翔ける」は、本能寺の変に向かう斉藤内蔵助利三の心に秘め続けたもの、を描く。いずれも良い。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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