yureru.jpg「京大地球科学教授の最終講義」が副題。「今日本列島は揺れている。東日本大震災以降、日本は地球の歴史から見て、地震、火山の噴火などが多い地殻の変動期、大地変動の時代に突入した」「南海トラフ巨大地震は2035年± 5年の間に発生する」「日本には111の火山があるが、そのうちの20個が『噴火スタンバイ状態』にあって、その最大の火山が富士山だ」と警告する。鎌田京大名誉教授は、火山学、地球科学、科学コミニュケーションの専門家。しかし研究のみでなく、「知識は命を救う」「減災の意識を持とう」「指示待ちでなく自発的でなければ命を守れない」「なぜ行動しないのか。人間には過剰な心配を平常の感覚に戻す認知メカニズム『正常性バイアス』があるが、同調性バイアス(他者が行動するまで行動しない錯誤)、同化性バイアス(異常を背景の中に埋没させてしまう錯誤)から、異常があっても正常の範囲内で捉えてしまい行動できない。この正常性バイアスを変えなければならない」「普段の時間感覚を見直し、100年、1000年とかの長い目『長尺の目』、かつ地球的規模、科学的な目でものを見ていこう」「地球のストック(資源)を、大量消費するストック型文明からフロー型文明に転換する必要がある」と、解説し呼びかける。「科学の伝道師」としても著名だ。

「20の火山がスタンバイ状態」と言う。海溝型の巨大地震が発生した場合、数カ月から数年以内に、活火山の噴火を誘発することがある。20世紀以降にマグニチュード9規模の地震が世界で8回ほど起きているが、いずれも近くの活火山が大噴火している。そのメカニズムを詳説しているが、その意味でも火山にもハザードマップとタイムラインが必要だと思う。本書では「富士山噴火をシミュレートする」として、①火山灰②溶岩流③噴石と火山弾④火砕流・火砕サージ⑤泥流――を解説する。いかに恐ろしいか、厄介な灰かがよくわかる。富士山噴火に備えなければならない。

また「地球温暖化は自明でない」と言っている。「何十万年という地球科学的な時間軸で見れば、実は現在の地球は氷期に向かっている。日本の平安時代は現在よりも温暖な時期だった。ただ14世紀からはずっと寒冷化が続いている。大きな視点からすれば、地球は寒冷化に向かっており、寒冷化の途上で短期的な地球温暖化状況にある、というのが地球の現状です」「産業革命以降に大量に放出された二酸化炭素が現在の温暖化を生んだのだという考え方がある。しかし二酸化炭素が温暖化を引き起こす寄与率については、研究者によってなんと9割から1割まで大きく意見が分かれている。私自身は、将来にわたって、今の勢いで地球温暖化が進むかどうかは必ずしも自明ではないと考えている」と言う。

「大きな自然の摂理を念頭に置くと、現在の地球の姿も、太陽系の寿命である100億年という時間内の進化の一断面だと捉えることができる。地球は誕生以来46億年が経過していますから、太陽系の寿命の半分に差し掛かる頃だ」と思考は壮大だ。しかし言わんとするところは「南海トラフ巨大地震も富士山噴火も、いつ自分の身に降りかかってもおかしくない出来事だ。自分の身は自分で守る姿勢に変わって欲しい」ということだ。全くそう思う。防災・減災は今こそだ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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