konoseikaino.jpg「普遍的な正義と、資本主義の行方」が副題。2020年から228月までに、月刊誌に連載してきた時事的な評論集。流動化する世界の中で、日本はどうすべきか。ロシアのウクライナ侵略を始めとする世界を揺るがす問題の核心に、俯瞰的に時間軸を持って大胆に迫る。その社会学的アプローチは、極めて刺激的だ。

「ロシアのウクライナ侵攻――普遍的な正義への夢を手放さないために」が第1章。「ロシアがとったキリスト教は、東側のキリスト教、つまり正教。ヨーロッパを文化的に特徴づけているのは、西側のキリスト教であるカトリック(プロテスタンティズムが派生)」「プーチンには、非常に深いヨーロッパ・コンプレックス、ヨーロッパに対する憧れと劣等感がある」「ヨーロッパとははっきりと異なる大義をもつユーラシア主義?」「『ほとんどわれわれ』のウクライナは、ロシアよりもヨーロッパをとった」「フランシス・フクヤマの『歴史の終わり』の現在、戦争は、文明の衝突の様相を帯びる」「ロシアを非難しない国々がたくさんあり、反対5カ国、棄権35カ国から見える真の争点」「ロシアの一般の市民や民衆が『ヨーロッパ以上のヨーロッパ』たり得ることを行動で示すことこそ、真の問題の解決だ」と言う。愛国主義、ナショナリズムを通って普遍主義へ至る道があり、愛国的であるが故に、普遍主義に立脚することができることを、「日本人にとっての教訓」と言っている。

大きな論点は、第二章の「中国と権威主義的資本主義――米中対立、台湾有事と日本の立ち位置」だ。「中国のナショナリズムは、中華帝国のやり方をそのまま転用したものである。西ヨーロッパに出現した原型としてのネーションは、帝国的なるものの否定として成立した。中国は帝国をそのまま肯定的に継承し、ネーションとした」「台湾に執着するのは、中国が帝国の原理で動くネーションだからだ」と言う。中国は、国民国家の体をしながら、実質的には序列を非常に重視する帝国であり、法の支配よりも皇帝や共産党が上位に来る権威主義が資本主義と接合している。権威主義的資本主義は、有能でつよい権限を持つ官僚・行政があること法の支配が欠如していること国家の民間部門に対する高度な自律性――としているが、金権腐敗は免れない。しかもこの権威主義的資本主義は、グローバルサウスに輸出されることはない。そして極めて面白いのは、「インターネットを主要な手段の場所として、現在の資本主義は、本来はコモンズであるべき『一般的知性』に私的所有権を設定するレント資本主義の形態を取ることになる。そして、レント資本主義は、それを担う人々のイデオロギーや思想とは関係なく、権威主義的資本主義へと漸近していく」と言っている。

「ベーシックインカムとその向こう側」「アメリカの変質――バイデンの勝利とBLMが意味すること」「日本国憲法の特質ーー私たちが憲法を変えられない理由」の各章がある。「私はあなたたちのために何ができるのでしょうか」との白人の女子大生の問いかけに、マルコムXが"N o t h i n g"と答えた。哀れな犠牲者である黒人を支援しようでは拒絶されるのは当然。人種主義の根源にも触れている。短く、一度も変えていない日本国憲法のなぜ。「創設」の行為がないことを指摘している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

太田あきひろホームページへ

カテゴリ一覧

最新記事一覧

月別アーカイブ

上へ