「夢のタッグが描く人間ドラマ、完全小説化」とあるが、その通りぐいぐい引き込まれる。面白い。
中心となるのは、小学校5年生の麦野湊。その友達で、親から虐待を受けているらしい星川依里――。湊の母親、シングルマザーの早織は、不審な行動を繰り返す湊が、学校でいじめに遭っていると疑い学校に乗り込む。どうも、担任の保利が張本人のようだが、校長も教師も逃げるばかりで、謝罪も口先だけで、苛立ちは募るばかり。ところが保利は全く身に覚えのないことで、これまた苛立つが、ついに退職に追い込まれていく。クラスの中にも、乱暴ないじめグループがあるようだ。いったい何が起きているのか・・・・・・。調べていくうちに、湊と依里だけの秘密の避難所があるようだが・・・・・・。
「怪物だーれだ」――。本当に、誰が怪物かわからない。登場するそれぞれが、「怪物」のようでもあり、被害者のようでもある。いや自分以外のすべてが、「怪物」なのかもしれない。日常的に接していても所詮、他人は他人。理解が及ぶものではない。それぞれが自分の空間を作りながら生きている。そんな社会の不安定さ、怖さが、「怪物だーれだ」と迫ってくる。