「米露中北の打算・野望・本音」が副題。「プーチン大統領に責任があるからといって、その不正義を指弾するため、すべての領土を奪還すべく戦い続けることがいいのか。停戦の機を見出して、ロシアとウクライナを話し合いのテーブルに着かせる外交努力を国際社会はしなくていいのか。無期限にして、無制限の戦争の果てに、核戦争が起こっていいのか。それでもウクライナに"正義の戦い"を続けさせるのか。今こそ、危険極まりない戦争を止めなければ――」と共通認識を持つ。
「ロシアが、ウクライナに侵攻した直接の目的は、ウクライナ東部に位置するルハンスク州、ドネツク州の住民の擁護であり、非軍事化だった」が、いまやハードルが上がってしまった。ウクライナが、クリミア半島も含め全領土の奪還を目指すとしたら、ロシアは2州にとどまらず侵略する。重要なポイントは、「ロシア国家の存亡が関わるいわば"核心的利益"が脅かされた場合だ。ウクライナ側が、特殊部隊を使ってクリミア大橋を爆破させたように、セヴァストポリを攻撃させようとすれば、核使用の危機が現実のものとなる恐れがある」と懸念する。「セヴァストポリが、ウクライナの実効支配下に入れば、それは1991年の時点に戻るのではない。18世紀後半のロシア全盛期に皇帝エカチェリーナ2世の時代に領有した土地の全てを失うことを意味する」と言うわけだ。
そこで、犠牲者をこれ以上増やさない方策として"まず撃ち方やめ"が鉄板のセオリー。「ロシア側に、開戦前の国境線まで撤退せよ、クリミア半島も返せと無条件勝利を掲げて戦いを続ければ、停戦の機をつかむ事は難しい」「ウクライナの強硬な姿勢を支えているのは米国をはじめNATO諸国の兵糧と武器だ」「西側陣営の首脳たちも、停戦を実現させる方策を真剣に探る時だ」「停戦のキーワードは"中立化"の外にはない」と言う。
ロシアのウクライナ侵略を言語道断としながらも、ロシアと米国を熟知する両者が、ウクライナの地勢と歴史を掘り下げつつ、米露中北の「嘘」と「本音」、「虚実」を赤裸々に語っている。