2035.jpg2035年の中国はどうなるか」――。中国共産党が江沢民以来、国民との公約として掲げてきた「ニつの百年」。一つは中国共産党建党100年の2021年に「全面的な"小康社会"」を作り上げること。もう一つの百年目標は建国100年の2049年、「富強の民主的で、文明的な調和のとれた美しい、社会主義現代化を実現した強国」を作り上げることとしている。その「中国の夢」実現の中間点が2035年になる。習近平の中国はどう考えているか。国際社会はどう向き合っていったら良いのか――。中国を最もよく知る宮本雄二元中国大使が、毛沢東、鄧小平、江沢民・胡錦濤時代、そして習近平の今を歴史的経緯も含めて丁寧に分析する。

「中国といえば、共産党の一党支配による強権政治のイメージが強いが、かなり違う」「中国共産党は『国民』を恐れている」「ソ連・ロシアと違って、中国では、すべての王朝が農民蜂起により打倒されている。しかも儒学は民の声は天の声。天の声に従わなければ、天命が尽きると説く」「江沢民、胡錦濤の時代、集団指導制は確実に定着したが、その弱点もあらわとなった。胡錦濤は、江沢民に権力集中を邪魔され、やるべきこともやれずに、腐敗は蔓延し、弛緩した党・政府組織にしてしまった。そこで習近平は、反腐敗闘争、制度改革で権力を集中した」。しかし、2019年末からの新型コロナではゼロ・コロナ政策や国民生活に対する管理と締め付けの強化に対し、国民が強い不満を表明する。「豊かになるほど『管理』の難しさも増す」「国民が望んでいるのは、もう少し豊かで、もう少し自由のある社会の実現」「中国社会の中核をなす『義』という価値観」など、丁寧に指摘する。

2022年の党大会において「習近平思想」こそが、これまでの思想や理論を基礎に、新たに創り出された「新時代の中国の特色ある社会主義思想」であると位置づけられた。毛沢東思想及び鄧小平理論と並ぶ共産党の指導思想との位置づけだ。「政治とイデオロギーを重視すれば、経済は相対的に軽視される。政治と経済の矛盾という本質的問題」にぶつかるし、党の指導と組織の強化やナショナリズムの反映も、一直線でやれば反発や抵抗を呼び込むことになる。

「終章」の「2035年の中国」で「『中華民族の偉大な復興』で国民を引っ張っていけるのか」「軍事大国化路線は持続可能か」「対外関係の修正は可能か」「2035年の中国はどうなっているのだろうか」を論じ、「現行の国際秩序にとどまることの重要性」「米中関係は、中国経済と連動しており、経済の観点からも米中関係を上手にマネジメントする必要がある」「米中が軍事衝突し、全面的な経済のデカップリングとなれば、世界は破局に向かう。そうならないよう、最大限理性の力を発揮するべきだ」と中国の経済と外交の分野での調整が急務であると指摘している。そして、「日中が一時の感情に突き動かされるのではなく、冷静に相手を眺め、21世紀という時代に、何が護られるべきかを真剣に考え、行動することを念じて止まない。日本と中国の関係は、最後は国民同士が決める。中国もそうなのだ。国民同士の直接交流が広がっている。観光も、ビジネス交流も」と言っている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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