botti.jpg「限界家族と『個』の風景」が副題。「日本の家庭の食卓はどうなっているのか」――「食卓」を定点観測の場として、同一家庭の10年後、20年後を追跡調査、驚愕の現実を明らかにしている。これほどまで家庭が崩れてしまっているのか、恐ろしい。生きる基本としての「衣食住」も家庭だし、学校教育といっても家庭が大事で、「早寝、早起き、朝ごはん」運動を私は推進してきた。朝ごはんを食べているかどうかは、子供の学校教育に決定的な影響を与えるからだ。その家庭の食卓がどんどん崩れていると調査は示す。

追跡調査は、厳しい現実を浮き彫りにしている。バラバラに食事をしている家庭、好きな食べ物を子供自身に選ばせて出している家庭、家族一緒の食卓がない、朝昼晩3食のリズムがない家庭が増えていると言う。なぜそうなるかと言えば、「家にいると、子供が邪魔でとてもストレスだった」「子供を複数の塾などに入れて、自分の自由な時間を確保しようとする親が珍しくない」「2017~2018年頃、朝の家事や子供の身支度ではなく、携帯チェックやメール交換をする親が増えてきた」「子供に食べさせる煩わしさで、家族バラバラの勝手にさせる食事となっている」「家には、カップ麺や冷凍のピザなどがたくさん買い置きしてあり、家族は頻繁にそれらを『自分の分だけ』勝手に食べている」と言う。さらに問題は、これらの家には経済的困窮や親の不在や物理的居場所がないというのではない。深夜に帰宅する子供を心配したり、食事を用意しておく「案じる親」がないということだ。親自身に「自由とお金と無干渉」の考え方が広がってしまっている。自分の自由、自分の勝手、自分のペースを大事にする傾向が極めて強くなっていると言う。

そして10年後になると「2005年以降、乳幼児期の子供との共食を疎ましいと語った家の約半数に『家に帰らぬ子』が出現した」「中学生の頃から部屋に引きこもり学校にも行ってない子、高校の時から無断外泊が多く今もたまにしか家に帰らない子、高校を中退して親と没交渉、今も半家出状態の子が、2005年前後から目に見えて急増している」・・・・・・。そして家族が壊れ、家庭内離婚や離婚が増えているというのだ。ダイニングテーブルさえもない家族や「独りベッド飯」の夫が増えるという家族の変化が指摘されている。身体の具合が悪くなった高齢者は同居を望むかもしれないが、本書の調査によれば、逆に「没交渉」「ノータッチ」にされる可能性が強いという。衝撃的事実だ。

これまでの日本の論調では、「貧困」による家庭破壊、子供の貧困などが問題となったが、そのさらなる底流に、「家庭のバラバラの食卓」「限界家族と個」があり、「主婦の『自分一人の時間』志向」という意識の変化に「家族共食を蝕むブラック部活とブラック企業」などが追い打ちをかけていることが指摘される。主婦も、家族も「自分の時間」「自分一人の時間」を生きるようになった。「個化する家族」は、旧来の家庭が担ってきた様々なものを内側から無用化している。

一方、この調査を通じ、きちっとした「家庭の食卓」をしてきた家庭は、円満家庭として崩れない。家族が減っても「共食」を維持している。家事協力も崩れていないことが示される。しかしこの調査では、10年後に「円満」「多少の問題を抱えながらも、円満を保っている」という家庭は、36%であったという。恐ろしい現実が、日本社会の底流で進行している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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