誰でも微分・積分を学んだが、また誰でもあれはどう役立ったのかと思うのも事実だ。「私以上に微分・積分を語れる人はいない」と言う著者が、数式を使わず、図やイラストを中心に解説する。微分積分は、「未来予測の数学」であり、「物事が今後どうなるのかを計算によって導き出すこと」「未来のために、今やるべきことをはっきりさせること」という役割をもつと言う。
微分は「微小に分けることで、計算を簡単にする」、積分は「分けて計算したものを積み重ねて元に戻す」ものだ。積分は、紀元前5000年ごろから始まった古代エジプト文明で、ナイル川の水位を確認する「ナイロメーター」に原型が見て取れる。古代ギリシャで生まれた「取りつくし法」から「長方形でグラフを埋め尽くして面積を求める」積分の考え方が生まれ発展した。積分の正体とは「グラフの面積を求める計算」だった。微分は砲弾の軌道を正確に知りたいという戦争と大砲から生まれた数学で、16、17世紀ごろ始まる。グラフの接線を求める計算、グラフの傾きを求めることだ。微分と積分は、お互いに逆向きの計算になっている「微積分学の基本定理」だ。
現代社会で、天気予報、人口予測、放射性物質の放射線量予測、飛行機の空気抵抗・揚力計算、道路のクロソイド曲線、ロケットの推進方向や速度のコントロール、コロナなど感染症の広がりの予測、日々変動する株価の予測などあらゆる場面で使われていることを紹介している。現代社会を支えている微分・積分であることがよくわかる。ちなみに天文学者・ケプラーは、酒樽に入ったワインの量を測ろうとして、積分という世紀の大発見に至ったと言う。