hamasu.jpg「メディアが隠す事実」が副題。前著「イスラム2.0」では「イスラム教は平和な宗教という通説があるが、2000年以降、ジハード主義が世界中で急速に拡大した背景にあるのは、イスラム2.0であると考えている」「イスラム教徒と共生するためには、多様性社会への粘り強い知的営為の努力が必要」と言っている。

昨年10月からのガザでの戦闘――。「"弱者は正義、弱者こそ善"という観念が世界を席巻している」「強者たる権力者は支配者なので常に悪人である」を、世界で最もうまく利用しているのが、イスラム過激派テロ組織ハマスだと言う。「我々パレスチナ人は、占領者イスラエルによって虐殺されている弱者である」と。

主張は鋭角的、直截的だ。「そもそもハマスはパレスチナの代表ではない。パレスチナ人を武力で抑えつけて支配しているテロ組織だ」「ハマスはイスラエルという国を殲滅することを目指すテロ組織である」「パレスチナ人を人間の盾に利用しながら、弱者を守る戦士の顔で、イスラエルの民間人を標的にした無差別攻撃をかけた」「イスラエルの軍事作戦の標的は、パレスチナ人の民衆ではなくハマスである」「ハマスはガザ全体をテロ基地にして、住民を盾に立てこもる卑劣なやり方をしている」・・・・・・。

これに対して、メディアは「圧倒的軍事力を持つ強者」としてのイスラエルと、ガザという「天井のない監獄」に閉じ込められ、逃げ場を失った「哀れな弱者としてのパレスチナ人」という非対称性を強調していると言う。「どっちもどっち」論ではない。「私たちはテロを容認してはならない」と言う。そして「当初、日本はハマスの行為をテロと非難せず主権国家であるイスラエルに『自制』を要求する声明を出したことはおかしい」と指摘、それは「全方位嫌われ外交」を招いている。アラブ諸国のハマスへの対応を見よ。イランなどはどう動いているかを見よ、と激しく言う。

顕在化した事件の背景には、常に内在する歴史性があり、宗教にも人間存在そのものの本質をめぐる確執がある。地政学とも相まって根は深い。背後にある構造、構造的暴力の複雑性を剔抉することが不可欠だ。今年に入って、この地域では「ヒズボラ」や「イスラム国」の動きもある。「ウクライナ」も2年になる。大変な、そして重要な年となっている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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