jennda.jpg裸で縛られ、土手下に無残にも転がされた男性の殺人事件。その遺体には、「目には目を」というメッセージが残されていた。その男性・佐東正隆の息子・進人は、過去に集団レイプ事件の加害者だった。大学生四人が一人の女子大生をカラオケルームで酔わせて暴行、逮捕されたが、起訴は見送られた。加害者と被害者の間で示談が成立し、被害者が裁判所で証言しないというパターンだ。今回の猟奇殺人事件、集団レイプ事件と関係があるのか。恨みを買っているとしても、なぜ親が無残な姿で殺されるのか。捜査本部(帳場)が設置され、刑事で柔道の猛者の鞍岡直矢は、警視庁の切れ者・志波倫吏とコンビを組み、事件を探っていくことになる。世に晒され、今もなお苦しみ続けている被害女性とその家族。その兄・ 端本竜介が恨みから殺人を犯したのではないかと捜査は動き出すが・・・・・・。次々と現れる容疑者、そして明かされる被害者・加害者の関係者の悲しい過去や苦しみ。怒涛の広がりを見せて壮絶な新たな殺人へと傾れ込んでいく。このジェンダー・クライム(性にまつわる犯罪)の消し難く打ち続き、連鎖する苦しみの深さを描き出す力作。

重層的なサスペンス小説であるとともに、主テーマは「ジェンダー・クライム(性にまつわる犯罪」。「性被害はまだ軽く見られている。それは『魂の殺人』であり、人の一生をダメにする」「被害に遭った女性は、家族までいわれなきバッシングを受け、住所や仕事先もネットでさらされて日本にいられない状況になる」「被害者のみならず、加害者自身やその家族の一生をも壊していく。世にさらされ、責められ続け・・・・・・」「私たちは無意識のうちに、女という性を軽く見てはいないか。たかがと思う心があるからではないか。一人の人間の人生を壊し、魂を殺すのも同然の、酷い犯罪が行われたのだと意識があれば・・・・・・。この国の根っこにある、我々の・・・・・・。我々の罪ですよ」と言う。また本書では、妻や子への虐待がいくつも出てくる。また、「奥さん」「ご主人」という言葉遣い、この社会に受け継がれてきた男女間の差別やジェンダーをめぐる旧来からの「男らしさ」「女らしさ」をめぐる課題をも提起している。さらに加害者の「だから・・・・・・もう、俺のしたことを許せよ。もう許して欲しかった・・・・・・もう、終わりにして欲しかったんだ」という苦しさから逃れたい心情が語られる。親などから感情的に責められ続ける苦しさ、謝罪して区切りをつけたい複雑な心境が吐き出される。「謝罪」とは何か。重いテーマが問い続けられる小説。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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