seigino.jpg全くその通りで、こういう角度でわかりやすく解説しているのは、重要で面白い。経済ばかりではなく、政治の現場では常にあり悩むところだ。西部邁さんは「ポピュリズム」と「ポピュラリズム」を分けよと言ったが、民衆の声を受け取ることと、民衆に媚びる事は違うというのはよく整理されていると思う。論理ではなく空気で決まる情緒的な日本社会に、最近のSNS時代が加わり、なかなか「ちょっと待って」と熟議することが難しくなっている。だからこそ、存在感ある思考し哲学ある政治家の出番だと言うことだ。

この30年余の日本の政治・経済・社会――。「地価を下げることこそ正しい」「銀行救済に税金投入はけしからん」「日本はものづくり国家、額に汗して働け」「弱い中小企業は皆救うべきだ」「堕落した官僚は懲らしめろ」「金融政策はあらゆる手段を」「高齢者は弱者、皆で助けよう」「人口減少は国家的危機」「拙速な改革は避けよ」という9つの「正義」のバブルが紹介され分析されている。公共事業悪玉論も構造改革ブームも「政治家はまず身を切る改革」についても触れている。「4文字熟語に気をつけよ」と、石川好さんが言ったことを思い出す。富国強兵、鬼畜米英から構造改革に至るまで、ピタッとはまる4文字熟語にやられてしまったのは日本の常だ。しかも、有識者やメディアまでが奔流となる。

「地価を下げることこそ正しい」の「正義」は、劇薬だった総量規制や地価税の導入によって収めはしたが、バブル崩壊の損失を大きくし、「公的資金の投入はけしからん」の大合唱は不良債権処理を長引かせた。公共事業悪玉論も財政再建論の槍玉に上がり、インフラのストック効果と防災・減災・ 老朽化対策をないがしろにした。「高齢者は弱者」「堕落した官僚を懲らしめよ」も、歪みをもたらせている。一つ一つのテーマが、極めて現実的で、この30年の我が人生とダブっているだけに実感を持って感じる。日本人論でもあるかもしれない。

4文字熟語に気をつけよ、「正義」がブームになるときに気をつけよ、冷静な分析を心がけよ。本書は「デジタル敗戦」「人口減少・少子高齢社会」の今こそ、日本の停滞を招かぬよう、その教訓を抉り出していいる。過剰な「物語」が、長期停滞の闇を再び招かぬよう・・・・・・。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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