minsyusyuzi.jpg「比較分析が示す変容」が副題。現在の経済的、文化的、政治的状況に潜んでいる民主主義の危機について、民主主義研究の第一人者であるプシェヴォスキが判断の手立てを示す。著者は「民主主義とは、人々が選挙を通じて政府を選択し、好ましくない現政権を排除できる相応の可能性を持つという政治的な取り決めのことである」とその立場を示す。そしてギンズバーグとヒュクのいう3つの「民主主義の基本的な述語」たる競争的選挙、表現や結社の自由の権利、法の支配から言えば、「選挙が非競争的か」「権利が侵害されているか」「法の支配が崩壊してるか」ということになる。

具体的に、これまで民主主義崩壊の経験を持つドイツ・ワイマール共和国と1970年代のチリ、逆に危機にあっても、民主主義が維持された1960年代のフランスとアメリカを取り上げ分析する。そこから見えてくるのは、「最も顕著なのは所得水準。短期的な経済危機は民主主義の脅威とはならないが、長期にわたる所得の停滞は崩壊を招く」こと。さらに「大統領制の脆さ」と「暴動とストライキは民主主義を弱体化させるが、反政府デモに関しては暴力的でない限りそのような恐れは無い」と分析する。

そして現在、何が起きているのか。その危機の兆候として、「既存政党の衰退」「外国人排斥的、人種差別的、ナショナリスティックな政党の台頭」「民主主義への支持の低下」の3点を挙げる。特に中道有権者の投票率低下が、右派ポピュリズムの台頭につながっている可能性を指摘する。

考えられる原因として、「経済――所得の停滞(雇用の減少と低賃金のサービス業増加)、不平等、流動性」「分断――分極化、人種差別、敵意」を挙げている。

いかなる社会、いかなる場面でも対立があり、紛争がある。政治制度は紛争を、構造化し緩和しルールに則った調整を行う――ことで、秩序を立てて処理するものだ。その意味で選挙こそが、政治的安定のための要とすることだ。民主主義が危機に陥らないためには、「人々が選挙を通して政府を選択する」「選挙を軸として、昨日の敗者が明日には勝者となるかもしれないという期待値が満たされていること」が大事である。そのために危機の意味を冷静に分析し、その回避の道を考察することの重要性を指摘している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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