次のテクノロジーで世界はどう変わるのか  山本康正著  講談社現代新書.jpgデータの争奪戦、データ・テクノロジーの活用いかんで企業も国も浮沈が決まる。GAFA対BATは今、米国の「FAANG+M(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル、マイクロソフト)」と中国の「BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)」の戦いとなっている。2020年代のテクノロジーの構図は「データの高速化・大容量を実現する5G、データの保存・処理能力を飛躍的に伸ばすクラウド、それらのデータを使って高度な判断を行うAI。この3つのメガテクノロジーを組み合わせることで形成される三角形=トライアングルの力が、次代の産業・社会・国家を大きく変える原動力となる」ということだ。その中心はAIであり、このトライアングルを基軸に、自動運転やスマートホーム、ヘルスケア、ロボティクスをはじめ全方位で新たな世界が開かれる。加えて4つめの軸としてブロックチェーンが登場し、データや情報がより効率化・民主化されていく。

「AIのインパクトは、良質のアルゴリズムとデータ量の掛け算で決まる。東京圏のデータ量は世界でも最高水準にある。本気でAIのアルゴリズム開発に取り組めば、世界のAIテクノロジーをリードする存在になり、日本のAIビジネスが再生する可能性は十二分にある」という。AIを中軸とし、5G・クラウド・ブロックチェーンの基礎的考え方と世界の現状、志向している激流の未来を解説する。そして、「貪欲に海外から学び、取り込み、行動しよう」と強く言う。


小説 片羽の蝶.jpgこの半年、日本で最も売れ読まれたという「鬼滅の刃シリーズ」。吾峠呼世晴さんの人気漫画「鬼滅の刃」を、矢島綾さんが小説化した「鬼滅の刃 片羽の蝶」。

鬼に両親を殺された幼い胡蝶カナエとしのぶの姉妹を悲鳴嶼行冥(鬼殺隊の"岩柱")が助ける。姉妹は鬼を討つ「鬼殺隊」への入隊を希望する。姉・胡蝶カナエは戦いに敗れて死亡、しのぶは"片羽の蝶"となる。

甘露寺蜜璃(鬼殺隊の"恋柱")、不死川実弥(風柱)と玄弥の兄弟、"水柱"富岡義勇ら"柱"の面々、竈門炭治郎や同期の仲間・我妻善逸らの思いの交流を描く。

この人気アニメ制作会社が脱税で告発されたのは、残念なことだ。


カケラ  湊かなえ著.jpg美容クリニックに勤める医師の橘久乃は、久し振りに訪ねてきた幼なじみから、故郷の同級生・横網八重子の娘・有羽が自殺したことを聞く。母の手作りのドーナツが大好きで、太っていても運動神経がよく、明るく人気者の少女が、高校2年から学校に行かなくなり、なぜ死に至ったのか。母親の八重子は小学校の頃、太っていて"横綱"と呼ばれ、今回の自殺では「娘を激太りさせた"虐待親"」など責めたてられているという。大量のドーナツに囲まれて死んだという意味はいったい何か。

他人の視線と自分の理想、外見の美しさと内面の価値、長所と短所、好きなものと苦手なもの。ジグソーパズルはピースに違いがあってこそのもの。自分というカケラとカケラがはまって家族ができ、町ができる。しかし、時として自分だけがはまらず浮いてしまう。無理に押し込むと周囲のバランスを失う。「居場所」を失わないということの大切さ。「ピースがぴったりとはまる場所は必ずある」と結ぶのだから、"イヤミス"ではない。

社会は「外見」が大きな部分を占め、固定観念を形成する。しかし、一人一人が求めるのは、その奥に潜む「承認欲求」であり「自己肯定感」だ。そこに生じるズレを、「美容整形」と「誰しも喜ぶ母自作のとびきりおいしいドーナツ」で、悩みながら架橋して物語は進む。人間の本性に迫る心理ミステリー長編小説。


アジア経済とは何か  後藤健太著.jpg1980年代まで、アジアを圧倒的な存在感でリードしてきた日本経済。「日本一極」の20世紀、アジア最初の先進国となった日本の技術や産業がアジアに伝播し、「雁行形態型発展モデル」が進行。NIEsが躍進、中国が計画経済の挫折を経て「南巡講話」等で発展への本格的スタートを切る。そして90年代後半のアジア通貨危機の苦難を越えた21世紀のアジアは大きく変貌した。日本経済の地盤沈下がいわれるなか、どう活路を見出すのか。そのためには、そのアジア経済の地殻変動をまず正確に把えることが不可欠だ。副題にある「躍進のダイナミズムと日本の活路」を示す。

アジア経済のダイナミズム。その中心軸は、国際的な生産分業体制、グローバル・バリューチェーンの展開だ。安い労働力を求めて工場を移すという時代を越えて、今やほとんどの工業製品はグローバル・バリューチェーンのなかで作られ、その展開は特にアジアで顕著となっている。競争力のカギは、他国の企業といかに効率的な生産ネットワークを築くことができるかだ。中所得国の台頭はめざましく、アジア経済の多極化が眼前にある。もう一つの軸は、「ものづくりのあり方が、これまでの日本企業が得意としてきた『擦り合わせ(インテグラル)型』から、アジアの新興企業が新たに参入しやすい『組み合わせ(モジュラー)型』へとシフトしたこと」だ。この「グローバル・バリューチェーンの時代」「モジュラー化による地殻変動」には、ICTの加速度的進展が拍車をかける。そして国境を越えての生産フローの分断・分散立地(フラグメンテーション)と工程ごとの集積(アグロメレーション)という二つの異なるダイナミズムの相互作用が進み、グローバル・バリューチェーンの展開を支える。

後藤さんは「日本の後退・没落」などと悲観するのではなく、日本をある局面では超える国・地域が出てきていること、その地殻変動を正確に把え、例えば「"選ぶ日本"から"選ばれる日本"」へ積極的に踏み込むこと、「アジアとともに未来を築こう」という。

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プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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