「この工場が死んだら日本の出版は終わる・・・・・・」「日本製紙石巻工場は、家族や知人・同僚たちを亡くし、家や思い出を流された従業員たちが、意地で立ち上げた工場だ」・・・・・・。絶望的な状況から、奇跡の復興を、どこよりも早く果たした職人たちの闘い。日本の強さは、この現場で黙々と働く人の強さ。執念のバトンが次々と手渡されていく。そこにはまた現場から信頼を得ているリーダーの意志が必ずある。
日本の出版用紙の約4割が日本製紙で生産されており、石巻工場はその基幹工場だ。私は2011年4月13日、2012年3月11日・・・・・・など石巻を訪れ、その都度、切実な要望を受け、走った。日和山にも立った。この日本製紙が、何としても操業すると宣言し、動いたことがどれだけ市民に希望を与えたか。芳賀義雄社長、倉田博美工場長、佐藤憲昭8号抄紙機(8マシン)リーダー、日本製紙石巻野球部や居酒屋店主の証言・・・・・・。全ての人が捨て身の真実の言葉を心の中に持っている。そうして製造された紙。そして本。本をめくることに、感慨が走るようになる。「復興はこれからなのだ」と本書は結ばれている。その通りだ。被災地からは「風評」「風化」との戦いが繰り返し述べられるが、本書はその打破にも間違いなくなる。
若年無業者――。定義も数字もまちまちだが、内閣府の「平成25年版 子ども・若者白書」では、15~39歳の若年無業者数を84万人としている。学校にも通わず、仕事もしていない若年無業者は、怠惰ではなく、社会が「誰もが無業になりうる可能性をもつにもかかわらず、無業状態から抜け出しにくい『無業社会』になっているからだ」と指摘する。加えて「今までと違って、若年世代は、社会的弱者にもなっている」「若年無業者は、高齢化しても無業状態は継続する(若年無業者の高齢化)」「税金や社会保険料を払うよりも、無業状態が続き生活保護等を受ける人が多くなると、社会が負担するコストギャップ(生涯のコストギャップは1人1.5億円)が巨大となる」――。
書では「働きたいけれど働けない」「働き続けることができない」「もう何から始めたらいいのかわからない」という若者無業者(15~39歳)を200万人ととらえ(自らの調査)、「働けない状況に追い込まれている状況の若年無業者という社会的課題を解決しよう」「手を差しのべよう」「手間と時間をかけよう。小さな成功事例を作ろう」と呼びかけている。
人間には自己肯定感が大事であり、生きる根本はそこにあると思う。「すべての若者が、社会的所属を獲得し、『働く』と『働き続ける』を実現できる社会」をNPO法人育て上げネット工藤啓理事長はビジョンに掲げ、「若者と社会をつなぐ」をミッションとしている。追い込まれ、孤独から脱することができない若者の実例も紹介されている。