吉宗や大岡越前をも巻き込んだ"辰巳屋一件""辰巳家疑獄"――。大坂の炭問屋・木津屋の吉兵衛のもとに、兄が急死したとの訃報が伝えられる。放蕩三昧であった吉兵衛が生家の辰巳屋に戻り、葬儀をはじめとして実家をまとめようとするが、兄の養子・乙之助を操り、やりたい放題の大番頭・与兵衛の大反撃にあう。事態は相続争いに発展。自ら逃げ出したはずの乙之助が、なんと奉行所に訴状を出す。裏には与兵衛、さらに泉州の廻船問屋・唐金屋与茂作(乙之助の父)がいた。大坂の奉行所では当然ながら訴状は退けられたものの、次には江戸の御箱にまで訴えを投げ入れる。江戸の将軍・吉宗や大岡越前守忠相をも巻き込む騒動になるが、牢に入れられた吉兵衛は頑として罪を認めない。
「一町家の跡目争いが、何でここまで大事になってますのや」「町人風情の跡目争いで、何ゆえお武家様が命を落とさんとなりまへんのや」――。「大坂」対「江戸」、「銀」と「金」の貨幣の競り合い、吉宗の治世と賄賂、「大坂」対「泉州」など、背景には時代そのものの構造が投影され、各人の思惑が交錯する。凄惨きわまりない酷い仕打ちを受けながら、妥協もしない、屈しない、信念をいささかも曲げない吉兵衛だが、「何故に強情にそんなに頑張ったのか」「悪玉とは何か」「どれだけの人の人生を不幸に巻き込んだかが悪党の度合いか」等々の哲学的問いも漂い、迫力ある小説となっている。
12日、海上保安庁の海上保安政策過程で学んでいるマレーシア3名、フィリピン1名、スリランカ1名、日本2名の3期学生の表敬を受けました。これはアジア諸国の海上保安政策に関する修士レベルの教育を行うためにスタートした教育課程で、私が国交大臣時代に新設したものです。
私は「このプログラムが多くの方々の支えによって、3期目の卒業生が出るようになってうれしく思っている。世界の宝である海の平和と安全を守るために、一番頼りにされているのがコースト・ガードたる皆さんである。大切なことは現場をよく知ることであり、その現場感覚のうえに各国が連携をとって、協力し合うことが大切である」とあいさつをしました。3期生の皆さんからは「実技をはじめとして多くのことを学ぶことができた」「寝食を共にし、各国の学生とも深い交流ができたことは意義深い」「お好み焼きやおにぎり、ラーメンが大好き。本場の日本食は全然ちがう」「温泉は最高」など、和やかに懇談しました。
今日お会いした訓練生が、今後それぞれの国の海の安全のリーダーになっていくことを期待しています。
5つの短編が合流する。「情報に騙されるな。意図的な悪意に満ちた戦略的なものもある」ことを示唆する。ネット時代は情報洪水の時代――。真実もあれば、誤報・虚報、フェイクニュースがあふれ、なかには意図的に虚報を流し続ける集団もいる。既成の新聞、テレビ、よりセンセーショナルな週刊誌等があるなか、それに対して個人が情報発信するネットは従来の世界を一変させている。「レガシー・メディアの信用を低下させる」「第4権力マスメディアに対する第5権力」「正しいより面白い、人の役より自分の役に立つ」・・・・・・。情報に対する考え方が根本的に変わってきている。そのなかで記者たちはどう動くか。一般市民はどうするか。「記者は現場やで」「浅瀬に留まるな」との声が響く。
「黒い依頼」――地方紙の記者が、フェイクニュースを作ってしまう。誤報ではなく虚報の悪に堕していく話。「共犯者」――かつて同僚であった記者仲間・垣内が自殺した。その直前、電話をしてきたが、相賀が気付いたのは死んだ後だった。残された遺品を調べてみると、かつての「サラ金」地獄の取材資料・切り抜きがあり、その背後には1人の女教師の人生を狂わした誤報記事があり、なんと自らが関係していたことに驚愕する。「ゼロの影」――元記者の野村美沙が勤めている語学学校のビルで盗撮事件が起き、男が逮捕されたが、なぜか原稿は闇に葬られ、警察も沈黙したまま。報じないこともまた誤報だが、裏に潜んだ秘密とは。「Dの微笑」――コンビを組んでいた相方が売れていくのに嫉妬した男が、捏造記事・ニュースをつくる。それを暴いた記者がまたウェブメディアにそれを流すというドンデン返しの話。これまでと違うネット時代。「書き手がその都度媒体を選ぶ。それが『マス以後』の世界だ」という。記者を鳥籠から解き放つ解放感・歪んだ微笑が生ずる怖さ。「歪んだ波紋」――これまでの4話が合流する。意図的に虚報を流し続け、フェイクニュースの作り方まで指南する集団「メイク・ニュース」に、安田・桐野・徳田らが加わっており、三多園が率いる「ファクト・ジャーナル」も標的にされる。彼らの意図とは・・・・・・。