資産家の養父の遺言で山を相続した安原はじめ。その遺言書には「どうしてこの山を売ってはならないのか分からない限り、売ってはいけない」と不思議な一言が書かれていた。今時、山を相続してもと思いがちだが、翌日から「売ってくれませんか」と言う者が続いた。さらに「私と一緒に来てくれませんか」「私は幽霊です」という美女が誘いに来て、「あの山は、ある者にとってはまさしく桃源郷のような場所」という。"幽霊"に誘われ、山に入り、トロッコに乗せられて着いた場所は、山内(やまうち)という異界。
猿と八咫烏の大戦から20年――。山内衆を手足として治めていたのは八咫烏一族の博陸侯であった。"慈悲深い人"で「楽園」を築こうとしているというが、今でも猿の残党に襲われるという。山を相続した安原はじめは、その世界の戦いに巻き込まれ、"楽園"の真実に否応なく迫っていく。
八咫烏シリーズの最新作。作者は松本清張賞を受賞した早大大学院博士課程に在籍する若手小説家。
22日、東京都・北区合同の大規模な総合防災訓練が北区中央公園で行われました。
この防災訓練は首都直下地震に備え、東京都、北区、消防、警察、自衛隊、北区の消防団、町会など全ての防災関連の機関が参加し、かつてない大規模の防災訓練となりました。
訓練では、初期消火、倒壊家屋からの救出救助、道路啓開活動、中層ビルからはしご車を使った救出、東京消防庁の消防車や消防バイクでの放水消火活動、警視庁や自衛隊のヘリコプターを使用した救出救助など、より実践に近い訓練が行われました。
また、隣接する陸上自衛隊十条駐屯地や東京成徳大学の会場でも多くの関連団体の展示があり、コロナ感染症対策として、事前登録をされた来場者の方々も参加されました。
災害が頻発し、激甚化・広域化しているなかで、極めて重要な訓練となりました。
「大学入試改革・教育政策を問う」が副題。東大文学部の5人の教授による緊急講演録で、「文学国語」と「論理国語」の分割、実用重視の新・大学入試共通テストについて、より深く「ことば」「言語」について語る。「言葉というのは豊かで複雑なものだ。言語の基本的機能には、コミュニケーション(伝達機能)、思考の機能、美的機能があるが、コミュニケーションひとつを取っても非常に奥が深い。現代の国語入試の変更の方向を考えると、実用や論理がどうこういう以前に、言葉そのものに対する畏敬の念が失われつつあるのではないかと危惧する。コミュニケーション、論理、実用などという前に、その根本にある人間の言葉というものの豊かさ、複雑さに向き合わなければならない」(沼野充義)という。そして「人間の言葉による表現は、試験問題の求める単一の正答に還元できるような単純なものではなく、複雑で、豊かで、時に嘘をつくこともできるし、時に意図的で曖昧でもある」という。
「国語をめぐって起こっている問題の本質は何か。それは『ことばをツールだと思っている』ところにあるのではないか」「ことばを大切にしないことで、おそらく、人権や民主主義や自由といった、私たち人間が長い間ことばを通じて培ってきた価値について、非常に大切な部分が決定的に損なわれる危険がある」「私たちはことばで行動して、自身のあり方を作っていく。ことばは私自身である」「対話とはことばを交わすことであり、ことばは魂と魂の間で交わされるものだ。魂の間のやりとりだ(コミュニケーションは単にことばを道具として使っているのではない)」(納富信留)と、哲学からの考察を語る。「読解力がない、とはどういうことか。注意力と読解力は同じではない。多くの学力テストは注意力のテストとなっている」「国語で最も重視されてきたのは、ニュアンスや効果の読み取り、メタレベルの視点の獲得、文脈の読み取りだ。言葉の背後にどのような場面が想定されているかを理解できているかどうか」「『読み』をめぐる奥深さは世界の奥深さとも直結している」(阿部公彦)・・・・・・。「時空を異にして存在する文化の継続と断絶、人間の個別性と普遍性。人と文化の両面性をバランスよく適切に捉えることなくして、古代のテキストの読解は成立しない」「過去の言葉に耳を澄まさぬ者に未来を語る資格はない」(大西克也)・・・・・。
言葉の背後にはつねに相互性や関係性がある。言葉は単なるツールではない。コミュニケーションは単に言葉を道具として使っているのではなく魂と魂の触れ合い、ぶつかり合いだ。言葉というのは通じないものだ。そう考えたうえで、時間が限られ、採点が求められ、出題する側も数々の制約があるなか作成しなければならない試験という形態のなかで、「大学入試改革・教育政策」を行うことは至難の極致のように思えてくる。