板橋の仲宿商店街で、父親から受け継いだ人気の中華そば屋「まきの」を妻と営んでいた牧野康平。2年前に妻・蘭子が急死し、店はできなくなりふさぎ込む。ある日、読書家の康平が、「神の歴史」という本を読んでいると、1枚の蘭子宛の古い葉書がページのあいだから落ちる。差出人は小坂真砂雄という大学生で「灯台巡りをした」という文章と、どこかの岬らしい図が描かれていた。蘭子は「全く覚えがない」といい、「このような葉書が届いたが、私はあなたをまったく知らない・・・・・・」という返事を出したのだった。「本当に妻は、彼を知らないのか」「62歳のひきこもりのおっさんになってしまうと立ち直るのは難しい」「よし、灯台を見る旅を始めるぞ」と、鴎外の「渋江抽斎」を読んでいるうちに康平は決意する。
妻の過去をたずねる康平の"灯台巡り"の旅。それを温かく支える康平の子どもや商店街の仲間・・・・・・。康平は「まきの」を再開しようとの思いが募っていく。「『渋江抽斎』は夥しい死の羅列だ。・・・・・・わずか生後3日で死んだ子さえも、目には見えないなにかを残していく。その子にとってはたったの3日間だが、それは永遠のなかの一瞬ではなく一瞬のなかの永遠なのだ」・・・・・・。次第に妻が守り抜いた秘密、葉書の意味が明らかになっていく。それはそのまま毎日毎日、商店街の中華そば屋で康平とともに身を粉にして働き続けた「蘭子」という女性の"生き方の芯"に迫ることになっていく。感動がせり上がって来る。そして、市井に生きる人々の「美しさ」や「幸福感」が波が打ち寄せるように迫る。人知れず風雨にも屹立する"灯台"は、人生の"生きる芯"を表現するように思えてくる。素晴らしい作品。
2日、リサイクル技術で日本有数の石坂産業株式会社(石坂典子社長、埼玉県三芳町)を視察しました。これには、埼玉県会議員、地元三芳町の町議のほか、環境省等も参加しました。
同社は、建設業廃棄物などのリサイクル技術でトップクラスを誇り、高いリサイクル化率を可能にするため分別分級を徹底的に追求しています。また、地域環境に配慮した投資を行ったり、里山再生、人材教育等にも力を入れています。
現場では、コンクリート、土砂、木材などが独自のノウハウで処理されていて、「分ければ資源、混ぜればゴミ」のモットーのもと、分別分級も徹底的に行われていました。
一方、同社は敷地内に、人と自然が共生できる里山づくりに取り組んでいます。この日も遠足の子供達や多くの見学グループが訪れていて、里山フィールドで食事や散策をして楽しんでいました。
脱炭素化など本格的な循環型社会経済を目指す日本にとって、その模範であり最先端を走るこのような企業の取組みがさらに広がっていくよう、バックアップする必要性を感じました。
11月1日は、豊島区が定めた「としま文化の日」――。全国でコロナ禍の諸行事が軒並み中止となるなか、記念式典を盛大に開催し、「としま文化推進期間」のイベントがスタートしました。高野之夫豊島区長、各種団体のリーダー、国会・都議会・区議会議員らが参加しました。
挨拶に立った私は、豊島区が、①SDGs未来都市に選定されたこと②国際アート・カルチャー都市を目指し力を入れていること――は素晴らしいこととし、「この二つこそ、2030年へ、ポスト・コロナの道しるべだ」「1930年代、アメリカがニューディール政策によって経済を発展させて、世界恐慌を乗り越えたことは有名だが、もう一つの大きな柱が、文化・芸術の振興策に力を入れたことだ。ハリウッド映画はここから一気に広がった」などと述べ、豊島区の文化・芸術を盛り上げる行動に声援を送りました。
「良い小説と悪い小説を見分けるには」「良い小説の定義は? 自分に正直な小説です。・・・・・・まず自分が書くことに心を打たれないと」・・・・・・。当然、国家が評価するようなものではない。
小説家・マッツ夢井のもとに一通の手紙が届く。「総務省文化局・文化文芸倫理向上委員会」とある。無視していると「召喚状」が届き、召喚されてC駅まで赴くと、海崖にある「七福神療養所」に連れてこられる。療養所というが、自由を完全に奪われた強制収容所だ。反社会的な作家たちを"更生"させる施設だという。「社会に適応した小説を書け」と命ぜられ、反抗できない者はあの手この手で、狂うのを待たれ、弱い人間は何人も崖から飛び降り死んでいた。社会と隔絶された収容所での悪夢がこれでもかこれでもかとマッツに迫り、精根尽き果てる。
「『表現の不自由』の近未来を描く、戦慄の警世小説」と帯にある。近未来でも、あってはならないことだし、人権感覚の摩耗を防ぎ磨くことだ。