nangoku.jpg気候変動の影響拡大が止まらない今、地球最大の氷である南極の氷に何が起きているか。またこの先何が起きるのか。南極氷床の面積は日本の約40倍、氷の厚さは平均2000メートル、場所によっては4000メートルを超える。もし全てが溶けて海に流れ込めば、地球の海水準(陸地に対する海面の高さ) は約60メートル上昇すると言う。極寒の南極の氷床が急激に溶け始める事はないと言われていたが、近年の研究で急速に氷が失われつつある事実が明らかになった。南極越冬隊の話は子供の頃から知っていたが、南極そのものを知らなかったことを改めて感じた。南極に何度も行き、科学的調査をしている杉山慎さんが、現在の状況を冷静に解説する。今もなお、わからないことばかりの南極の氷床と地球環境問題。副題は「気候変動と氷床の科学」。

「IP CC第6次評価報告では、21世紀末までに海水準が2メートル近く上昇する可能性を否定できない。21世紀に入って氷床が氷を失いつつある」「「氷河の流動と氷床。南極氷床は地球の氷河の9割、残りのほとんどはグリーンランド氷床。淡水」「明らかになった氷床の危機。崩壊する棚氷、加速する氷河」「氷床は温暖化でじわじわ溶けているのではない。海へと流れる氷河に起きた加速と言う異変によって海へ排出される氷が増加しているのだ。そこには棚氷の縮小がある。底面融解が増加し、薄くなり、場合によっては崩壊し、接地線が後退している。南極氷床は現在、まだグリーンランド氷床の半分程度に過ぎないが・・・・・・」「12万年前には今とほぼ同じ水準にあった海水準は、その後に低下し、直近の2万年間では100メートル以上上昇している。これは今は存在しないローレンタイド氷床の融解によるものだ」「今は間氷期で1万年を超えて続いており、過去の周期を見ると気温が下がる氷期になってもいい頃だが、そうなっていない。地球が人間の活動でおかしくなっているからか。研究者の間でも議論は様々だ」「海水準の上昇は、氷床の縮小。各研究者も縮小方向は共通しているが、大きさは2100年までに10センチもあれば、1.5メートルもある」「急激な氷床変動の要因は、①海洋性氷床の不安定性②海洋性氷崖の不安定性」「南極の未来を考えて不確定なのは、①温室効果ガスの排出量②降雪量や海水温などの気候モデル③氷の流動・氷床モデル」「2021年のIPCC報告書では、最悪2100年までに2メートル、2150年までに5メートルの海水準の上昇を否定できないと言う」――。

そして現在の気候変動がいかに異常かを示し、ブレーキをかける真剣な対策を、と言う。


20220218_134345.jpg新型コロナの感染がピークを打ったように言われますが、依然として警戒を緩めてはならない状況です。しかし一方、今後の経済・社会活動の再スタートの構えも求められています。3回目のワクチン接種の加速など、公明党が政府に対して政策要望の動きを強めています。特に3点の重要項目が、このほど実現することとなりました。


それは、①水際対策の緩和(現在原則停止している外国人の新規入国について、観光客を除くビジネス目的の短期滞在者、留学生・技能実習生らの入国を1日5000人に拡大。3月1日から) ②雇用調整助成金を延長(3月末までになっていたものを来年度以降も延長する) ③自衛隊の「大規模接種センター」について、東京・大阪ともに1日あたりの摂取人数を数千人大幅増とする)――です。メリハリのついた政策実現が今こそ大事です。

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yami.jpg学校、職場、団地などを題材としたホラーミステリー。人間の距離間がわからず、過剰に付きまとってくる人々。それが悲劇を生む。親切すぎたり、劣等感の裏返しで優越感に浸りたい、噂の世界、見栄の世界が集団を形成して人を追い詰めていく。社会により強くなっている現象を、辻村さんが極めて簡明にストーリーとした五編。ヤミ・ハラとは闇ハラスメント。「精神・心が闇の状態にあることから生ずる、自分の事情や思いなどを一方的に相手に押し付け、不快にさせる言動・行為」を言う。闇ハラで人を追い詰めていくザワザワとした怖さ。

「転校生」――。クラスに馴染めない私立高校の転校生・白石要は、親切に接する委員長・原野澪に「今日、家に行っていい?」と突然言ったり、家の周りに出没したりする。恐怖のあまり澪は、憧れの先輩・神原一太に助けを求める。ところがその神原の方が、澪に次々に自分の都合や善意・思いを押し付け、支配し、大量のLINEを送ってくる。背筋が凍る。

「隣人」――。団地に引っ越してきたフリーアナウンサーをしていた三木島梨津は、息子の学校のボランティアの活動班「読み聞かせ委員会」に入る。そこで女王のように振る舞う沢渡博美、それに追随する軽いことおびただしいメンバーと接する。容姿もセンスも完璧な博美は、どこかおかしい。飛び降り自殺、交通事故、人気の団地であるはずが同時多発的な引っ越しと続いて・・・・・・。博美が児童会長の息子に突き落とされてしまう。

「同僚」――。課長の佐藤から何時間も説教されている年上のジンさん。パワハラだが、それだけではない。ジンさんはどうも話を聞いてくれているようなのだ。パワハラ課長と不思議な年上の部下の話。ジンさんは神原という名だ。


utyuu.jpg「究極の『宇宙の法則』を目指して」が副題。夜空の満天の星や澄みわたる満月。美しい宇宙の諸現象を物理学者は「美しい理論」によって解明してきた。理論の美しさを求めるなか、宇宙の謎が今も解かれ続けていることを、画像やQRコードを入れて解説する。ブラックホールが合体した瞬間の音や、私たちが住む天の川銀河系とアンドロメダ銀河の衝突の動画は衝撃的だ。

美しさの秘密は「高い対称性」「簡潔さ」「自然な安定感のある理論」の3つだという。そこにその理論を「美しい」と感じるわけだ。納得だ。富士山やベルサイユ宮殿、東京タワーなど左右対称や円や球の対称性などを示しつつ、「宇宙は極めて対称性が高い空間だった」「宇宙空間は、3次元の世界で求めることのできる最大限の美しさを持っている」ことを論証する。そして、「4次元、5次元、6次元空間の対称性」「宇宙空間の曲がり方」「70億年ほど前から、宇宙の膨張速度が加速している」ことに論及する。

「ガリレオが望遠鏡で見た月は美しかったか。天上は別世界ではなく、地球と同じデコボコがあることに、ガリレオは感動したのではないか」「太陽はおよそ50億年後に燃え尽きる」「オリオン座のぺテルギウスはもう死んでいる」「私たちの銀河系はいずれアンドロメダ銀河と衝突する」「暗黒物質が大量に存在しなければ、銀河や星などは作れない。暗黒物質は私たちの生みのお母さん」・・・・・・。

「東京スカイツリーの上と下では時間の流れが違う」「りんごからクォークへ、ミクロの世界の統一理論」「対称性が破れた宇宙空間の根源には何がある?」「南部陽一郎さんの自発的対称性の破れの概念」「リニアが走るのは自発的対称性の破れのおかげ」「ヒッグス粒子は宇宙空間で対称性の破れが生じたことの証拠」。そして「宇宙の現在の姿は奇跡なのか」「地平線問題、平坦性問題という2つの不自然と、インフレーション理論」「インフレーションは星や銀河の種を蒔いたお父さん」「ちょうど人間が生まれる程度の暗黒エネルギーを持つ宇宙があっても不思議ではないが・・・・・・。人間原理か究極の美しい法則か」・・・・・・。

今も究極の法則を求めての探求が続いている。


syakunetu.jpg第二次世界大戦後、ブラジルの日本移民社会において起きた「勝ち負け抗争」――。本国との情報を遮断された日系人社会で、日本の敗戦を認めたくない「戦勝派(勝ち組)」は、連合国の謀略だとし、敗戦を認める「敗戦派・認識派(負け組)」を襲撃した。皇国への畏敬や帰国願望、それにつけ込む詐欺事件(偽宮事件など)がうずまき、23人もの死者、多数の負傷者を出した。異国で、日本人の矜持を持って入植地で寄り添いながら苦難を乗り越えた仲間を分断した亀裂。「このゴミ溜めにおる20万人の日本人、俺たちはお国に捨てられた度し難い棄民だ」「日本は負けたんだ! 情報の入ってこない植民地などをいいことに、騙されているんだ!」「ガイジンの中で生きる移民の女にとって、日本が勝ってくれることこそ切実な希望だった。信じたかった。信じるしかなかった」「誰もが見たいものを見るものだ」・・・・・・。私は35年前、ブラジルに半月ほど滞在、苦労話を溢れるほど聞いた。移民の歴史と思い、異国であればあるほど募る望郷の念と、日本人たる自分と、ブラジル社会で生き抜くこと――。本書でそれが鮮明に蘇った。意義ある力作長編。

1934年、沖縄生まれの比嘉勇は、両親となった正徳・カマ夫妻(勇の父親の従弟)とブラジルの日本人入植地「弥栄(いやさか)村」に入る。そこで無二の親友となる南雲トキオ、樋口パウロ、勇の妻になる勘太の妹・里子、学校の先生・渡辺志津らと会う。しかし、時代は枢軸国と連合国の戦争へと進み、弥栄村の日系人への締め付けが厳しさを増していく。そして第二次世界大戦、劣勢でどんどん本土決戦に追い込まれていく日本だったが、入植地には連戦連勝、「追い込まれているのではなく引き込み作戦」をやっているのだとの知らせのみが届いていた。そして終戦間近、勇は「愛国団体」を結成する。無二の親友である勇とトキオは引き裂かれていく。今、フェイクニュースが飛び交う情報過多、かつ攻撃性を持つSNS社会を背景にしてみると、この力作を読む価値がある。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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