sekaiinrure.jpg現在の世界インフレは、景気の過熱に伴う「デマンドプル・インフレ」ではなく、景気後退・政情不安を招く「コストプッシュ・インフレ」だ。パンデミックの収束による需要の急回復やサプライチェーンのボトルネックが原因であり、それに2022年2月のロシアのウクライナ侵略が加わり、供給制約に起因するコストプッシュ・インフレなのだ。そしてその背景には、グローバリズムの終焉という歴史的な大変化があると言う。中心のアメリカは、このインフレに対して、利上げという主流派経済学の手法で臨んでいるが、それはデマンドプル・インフレに対する手法で、直面しているコストプッシュ・インフレには逆効果で誤りだ。ニつのインフレは、原因も結果も対策も大きく異なることを銘記しなくてはいけない。デマンドプル・インフレは「需要過剰で物価が上昇」「賃金の上昇や国民所得の倍増を伴い経済を成長させる」のに対し、コストプッシュ・インフレは「供給減少で物価が上昇」「経済を縮小させ格差も生む(食料やエネルギーと言った基礎的な生活物資の価格が高騰するので低所得者に大きな打撃)」「コストプッシュ・インフレ下の利上げはインフレ自体は抑制できるのかもしれないが、その結果として、家計や企業が犠牲になるという誤った政策」「供給制約を緩和することが重要」なのだ。

まずグローバリゼーション――。「グローバリゼーションとは、貿易、投資、人、情報、技術、思想の国境を越えた移動が活発になることを意味している」「終わりの始まりは2008年の金融危機。ロシアのウクライナ侵略をもって、グローバリゼーションが終わった(アメリカのリベラル覇権戦略の破綻)」「70年代のインフレが新自由主義の台頭をもたらした」・・・・・・。

「フリードマンらのマネタリズムによれば、インフレの原因は貨幣供給量の過剰なので、貨幣供給量を制御すればインフレが制御できると考える。しかしマネタリズムの理論に反して、貨幣供給量の増加とインフレとが相関しなかった」「主流派経済学にとってインフレはデマンドプル・インフレであり、また金融政策を中心に考えた。しかし金融政策に限界を感じ、財政政策の有効性を唱えるようにはなってきているが・・・・・・」「問題の根源は貨幣に対する致命的な誤解にある――主流派経済学の貨幣・金融理論は貸付資金説に立脚している。これは事実に反している。銀行は集めてきた預金を借り手に貸し出しているのではない。借り手に貸し出すことによって預金を創造している。いわゆる『信用創造』だ」「注目すべき貨幣循環理論と現代貨幣理論」「財政支出に税による財源確保は必要ない。政府の支出が徴税より先にされなければならない。政府の支出によって民間部門に貨幣が供給され(貨幣を『創造』)、それが課税によって徴収される」「ポスト・ケインズ派は『需要が供給を生む』と考える」・・・・・・。
アメリカのバイデン政権は財政出動をしたが、コストプッシュ・インフレで格差が拡大し不満が充満する。アメリカの利上げが世界の各地域の通貨安をもたらし、債務危機のリスクが高まってEU等はナショナリズムが先鋭化する。

そして日本――。「軍事、食料、エネルギーさらには経済全般に及ぶ安全保障の抜本的な強化、サプライチェーンの再構築、ミッション志向の産業政策、内需の拡大、学者の是正と社会的弱者の保護などは巨額の財政支出を要請する。積極財政によってディマンドプル・インフレを引き起こしかねないほどに需要を拡大することが必要である」と言い、「大規模な積極財政による資源動員、産業政策による資源配分、資本規制、価格統制。まるで戦時経済体制のような『恒久戦時経済』の構築以外に生き残る道はない」と過激な提唱をする。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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