sibarareru.jpg「人口減少をもたらす『規範』を打ち破れるか」が副題。日本、アメリカ、スウェーデンの子育て世代へのインタビュー調査と、国際比較データを分析し、日本に根強い古い規範を打ち破ることこそ少子化対策の直道であることを示す。大事なのは「男性稼ぎ手モデル」を脱却し、「共働き・共育てモデル」にすること。スウェーデンはそれをやった。「日本の政界と経済界のリーダーたち、そして日本の多くの男性と女性が本気で取り組むこと」「女性が男性の5倍以上も無償の家事労働を担わなければならないような働き方と家庭内での役割分担を変えること」だと言う。

育児休業制度はある。しかし育児休業を取る男性が少ない。理由は育児は女性の役割であって男性の役割ではない思考同僚に迷惑をかけ、会社にも迷惑をかける。周囲にも育児休業反対派が多いと言う思い込み、多元的無知夫が育児休業を取得すると家庭が失う収入が大きい将来の役職に影響するーーなどに縛られているのだ。また、日本の男性は家庭で家事と育児の15%しか分担していない(女性が85%を担う)。ノルウェー、スウェーデン、デンマークなどは男性が40%以上になっている。アメリカも40%弱だ。ところが、男性が家事や育児に費やす時間の多い国ほど出生率が高いというデータが出ている。日本では、妻が有償の労働市場で働いている時間とは無関係に、家事と育児は未だに概ね女性の役割と位置づけられている。「多元的無知」とは、ほとんどの人がある考え方を持っているにもかかわらず、自分たちが少数派だと思い込んでいる状況だ。一人ひとりの男性は育児休業に肯定的だが、多元的無知があるために育児休業を取らない、自制してしまう。だが、上司や同僚がとれば、「雪だるま効果」が生じていくはずと言う。男性は育児休業を取るべきでないという強力な社会規範を打ち破り、「男性のあるべき姿」の定義を広げて、家庭生活に積極的に参加し、その時間を楽しむように変える。少子化対策はアメリカより制度的には進んでいるようだが、その背景にある「家族観」「会社と仕事」の意識変革が何よりも大事であることを示している。

アメリカでは家族の定義も広く考え、友人、近所の人も含めた支援ネットワークを築いている。日本が子育てが、「孤育て」となっていることを考えなければならない。それにアメリカは、「男性の役割は主として稼ぎ手」という考え方が弱く、「共働き・共育ちモデル」をしやすいこと、「労働市場の流動性が高い」ことも出生率の高さになっているという。日本の両立支援政策は、「女性に仕事と家庭を両立する方法を教えることに終始してきたが、男性稼ぎ手モデルを改めていない」と指摘する。

最後に、4つの政策提案をしている。「子どもを保育園に入れづらい状況を出来る限り解消する」「既婚者の税制を変更する(130万や150万円の壁)」「さらなる法改正により男性の家庭生活への参加を促す(出生時育児休業や給料の100%保証)」「ジェンダー中立的な平等を目指す」だ。

まさに今こそ古い規範を打ち破り、少子化対策に総力を上げる時だ。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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