愛媛県松山市にある港町・三ッ浦町。定年間近の新聞記者・宮武弘之、銭湯「みなと湯」の主人・戸田邦明、そこで働く釜焚き係で元暴力団員の定本吾郎、骨董店「天狗堂」の小松富夫。「3匹のおっさん」とはちょっと違うが、仲間のおじさんたちが、「みなと湯」の融資に真剣に取り組んでくれていた瀬戸内銀行三ッ浦支店勤務の丸岡将磨が、溺死体で発見されたことから、悪に立ち向かうことになる。その背後には、松山西部病院の不正融資に大物金融ブローカーや暴力団などの反社会的勢力が絡むなど、かなり深い闇があった。本丸は松山西部病院理事長の坂上象ニ郎。
人生の後半のおじさんたち。野心も失せ後悔もあるが、突如飛び込んできたこの大事件に、色めき立つ。その姿を、ユーモラスに、そして痛快に描き出す。どんでん返しに次ぐどんでん返しは、まさに「逆転のバラッド」。その一方で、外ばかり見て家庭を顧みないおじさんの悲哀も身に沁みる。
「あなたには、何も見えていない。新聞記者なのに、人の心がわかってない。そんな人に良い記事なんか書けるわけがない」「事件は人間が起こすものだ。背後には人間の欲望、邪念、自己保身、傲慢さ、脆弱さなど、数々の感情が渦巻いている。ただ起こった事象だけを見ていたのでは、事件というものを真に理解できない。坂上は自ら命を絶ってしまったが、それで全てが許されるというものではない。最後に死という逃避を選んだ彼は、どんな心境だったのか。記事を読んだ人々に、そこまで思いを馳せてもらいたかった。正しい事はなされたのか、どうなのか」・・・・・・。
しぼみつつあるおじさんたちの逆転劇は、とても楽しい。