「冷え性」で悩む女性、「脂肪吸引」にはまる女性の心象。こういうテーマを、赤裸々に描いた小説はあまりない。しかも「語り」が、率直で明るく、いわば「男前」で、とてもいいテンポ。2つの短編で構成される。
「ケチる貴方」――。「生まれてこの方、自分よりての冷たい人間に会ったことがない」から始まる。備蓄用タンクの設計と施工を請け負う中小企業に勤める女性。こんなことがあるかと思うほど、寒くて寒くてしょうがない。ぽっちゃりしているのに、なぜこの身体はかたくなに熱を生産しないのか。私の代謝機能はどうなっているのか。心臓の動悸が激しく打つが、心臓も冷え性も、意識してもどうしようもないものの異常は、自分にしかわからない苦悩だ。ところが温活が功を奏し、身体が温たかになり排便もあリ、体重が激減するという変容が・・・・・・。「ケチっては駄目だ。ケチな肉体は、ケチな魂に由来するのだから。私は迷いを振り払うように、ことさらご機嫌に振る舞った」「許す心、である。ここで怒ってはならぬ」・・・・・・。誰にもわからないようにしている自己を嫌悪する心への向き合い方。
「その周囲、五十八センチ」――。「脚が太いと、人生は、ものすごく難易度が上がる」「私の脚は、生来、人並み外れて太かった」――。脂肪吸引を始めて、次から次へとはまっていく。そして、「確かに私は人並みの体型になってからというもの、人に寛容になった。ごく自然のこととして、いちいち人を疑ったり嫌ったりせず世を渡っていけるようになったのだ。・・・・・・私は、この変化に自尊心というものの持つ力をまざまざと知り、それをつい最近まで自分が持っていなかったことに愕然とした」・・・・・・。見た目の判断。人は内面だ、などと無邪気に言う奴。これらの表現が絶妙。