「人類は、オンライン習慣にどっぷり浸かってしまい、前頭前野の機能が失われ、滅びゆく運命をたどってしまうのか。それともスマホという危険で便利なものを使いこなし、前頭前野の機能を手放すこともなく生き延び、さらなる繁栄を遂げていくのか」「このまま対策を講じなければ、オンライン習慣によって前頭前野の機能が衰え、『ものを考えられない』『何かに集中することができない』『コミニュケーションが取れない』、そんな人たちで溢れかえってしまうのではないかと危機感を覚える」と言う。10年以上にわたって、数万人の小中学生を追跡調査し、脳科学の立場で分析した知見を示す。「脳トレ」の川島教授率いる東北大学加齢医学研究所の研究成果だが、大変恐ろしい結果の数々だ。
「前頭前野は、ものを考えたり、理解したり、覚えたりといった私たちが知的な活動をする上で必要な認知機能を支えている。さらに、感情をコントロールしたり、他人の気持ちを推し量ったりするなど、社会生活を営む上で必要なコミニケーションに関わる機能も支えている」「その前頭前野の成長期にあたる10代。勉強や仲間たちとの豊かなコミニュケーションを通して、前頭前野を鍛え、発達させていくことが重要だが、スマホはその反対で妨げる。大人にとっても仕事や日常生活のなかで、意識的に前頭前野を使い、認知機能を維持することが必要」「記憶を蓄える機能を持つ海馬は、成人後にも神経細胞が増加する」・・・・・・。その前頭前野は、どうしたら鍛えられるのかといえば、「使うこと」だと言う。
調査結果は恐ろしいものだ。「スマホの使い過ぎが、子供たちの学力を破壊している」「勉強してもよく寝ても『3時間以上のスマホ』で台なしになる」「浅い眠りのレム睡眠の時に記憶を定着させるが、睡眠不足はそれを奪う」「スマホ横目に3時間勉強しても、成果は30分(脳は複数の物事を並行して行うのが苦手)、集中が大事だが通知音が鳴るだけで集中力が低下」「スマホやタブレットでの学習は、脳が働かない(知らない言葉を調べるときに、紙の辞書を引いた場合は、脳の活動が急激に上がる)」「スマホを使い、脳にラクにさせていると脳の発達が損われる」・・・・・・。
「コミニュケーションが、脳の発達には欠かせない」「オンラインと対面ではコミニュケーションの質が違う。『つながっている』と感じる時、脳と脳も同期する」「オンライン・コミニュケーションでは『一人でボーッとしている状態と変わらない』」「脳の活動の同期という現象は、コミニュケーションの質と関係していて、人と人との共感や共鳴といったものを反映している」「なぜオンライン会話では、脳が同期しないのか。会話において目を合わせる視線が重要」・・・・・・。
そして、「前頭前野の『自己管理能力』で、スマホから身を守れ!」と言い、警告とともに対策を示す。