kakusanokigenn.jpg「なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか」「人類の旅」が副題。壮大な人類史を圧倒的な力量で描く。

30万年前にホモ・サピエンスが誕生して以来、人類史の大半で人間の生活水準は生きていくのがギリギリだった。生存と繁殖の追求そのものだったといってよい。そして12000年前に狩猟採集から食糧栽培の定住生活に切りかえ、農耕社会は技術の恩恵をたっぷり受け、その状態は数千年続いた。技術の進歩は人口の増加を促したが、マルサスの罠(人口は制限されなければ、幾何級数的に増加するが、生活資源は算術級数的にしか増加しない)、貧困の罠に閉じ込められてきた。技術革新は長きに渡って経済の繁栄を促したが、結局は「人口増」によって、人々の暮らしは生存水準に引き戻された。また飢餓や疫病の影響から、平均寿命が40歳を超えることも稀だった。人類は誕生以来、生きていくのがやっとという暮らしを続けてきたが、200年ほど前を境にその状態を脱して持続的経済成長の時代に入った。

これが、本書の第一部の「何が成長をもたらしたのか――成長の謎」だ。一人当たりの所得は14倍に急上昇し、平均寿命は2倍以上に伸びた。人類の歴史を通しての技術の進歩は、加速を続けるなかで、「液体が気体」となるごとく臨界点に達したのが産業革命だ。そこでは特別な資源の需要を高めることになる。技術環境に対応できる技能と知識、養育や教育への投資を増やすことになったが、それは出産数を抑えることにもなった。ここにマルサスの罠とも別れる経済成長と出生率との根強い正の相関が絶たれ、成長と人口増加の相殺効果から解放されたのだ。

しかし一方、その経済的繁栄が一部の国や地域にとどまり、この2世紀ほどの成長は、全世界で均等には起こらなかった。本書の第二部は「なぜ格差が生じたのか――格差の謎」を論じている。その格差の謎について、出アフリカの歴史、アフリカからの距離によって「多様性」が異なることまで論証する。人類史のここの時代だけでなく、全過程の背後にある主要な原動力を探ると、「地理」「アフリカからの移動距離に相関する人口集団の均質性、多様性の度合い。そこに伴う文化」等の起源を掘り出していく。そして先進国と発展途上国との間には、「技術や技能、教育や訓練の充実」「人的資本への投資」「女性の有給雇用の増加」「社会の均質性と多様性の最適化」「未来志向」「平等や多元主義、差異の尊重」などが持続的成長の要因であることを示す。そして著者は、現代と言う経済成長の時代とマルサスの停滞の時代を別個の現象と捉えず、発展の全過程の背後にある主要な原動力を「統一成長理論」として打ち出す。「地理、アフリカからの移動距離」を初期条件とし、「制度と文化の要因」「人口構成と人口規模の歯車」に影響与え、最大の歯車である「技術の進歩」を回す。さらに「人的資本の重要性の増大」を経て、マルサスの罠を乗り越えて現代世界に至るのだ。

そして人類史的に見ても、「地球温暖化問題」の回避こそ重要だとし、人類の英知によって解決できると言っている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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