kokoro.jpg「直感と好奇心がひらく秘密の世界」が副題。難解と思われている数学。しかし数学は.「学ぶ」ものではなく、自転車に乗れるようになることをみても「やる」もの。歴史上の偉大な数学者たちも、直観と好奇心を総動員して、新しい世界を自分のものとしてきた。論理の世界の究極と思われがちだが、論理ではなく、直観こそが大事。アインシュタインは、「私には特別な才能など一切ない。ものすごく好奇心が強いだけだ」「私は直観とインスピレーションを信じる」と言った。

まさに世界の抽象的で理解不能だという事象を、理解できるようになること、見えるように感じられるようになることだ。直感を豊かにし、より力強く奥行きのある新たな脳内表象、脳内イメージを構築・発達させることだ(形の発見。円なら円というイメージ)」「デカルトの『方法序説』は理論書ではない。デカルト自身が試した知性向上テクニックについて語る個人的な証言であり、人間には自分で自分の知性と自信を構築する能力があるというメッセージを伝える自己啓発本である」と言う。ただし、その直観は、「数学的直観は私たちが日常的に使っている直観と同じものではあるが、言語や論理との対決によって発達し強固になっていく」「優れた数学者は、驚異的な直観と高次元の抽象的な構造を深く理解する能力を鍛えている」のだ。そして、「数学を書き表す仕事は、考えの明確化と言語の精緻化という二重の作業である(他人が捉えて再現できるように、自分の脳内イメージを明快、かつ精緻に書き換える高度な技術)」と指摘する。

「ボール1個とバット1本の値段の合計は1ドル10セントである。バットの値段はボールよりも1ドル高い。ボールはいくらだろうか?」(認知バイアス研究でノーベル経済学賞受賞した心理学者カーネマンの問い)。ほとんどの人が10セントと間違う。「1から100までの整数の和はいくつになるか」(数学者ガウスの昔話)5000と間違って答える人が多い。無意識に出来上がった脳内イメージを解体し、直観を強化する作業が必要となるわけだ。「数学は知識ではなく実践である。脳の可塑性は無限であり、数学的知能は自分で構築するものだ」と言う。

「人間の言語と数学の言語」――この2つの言語は、何千年も前から並行して進化して、今日に至る。2つの言語は全く異なる2つの論理に従っている。そしてそれぞれ固有の機能、固有のルール、固有の強みと弱みを持つ。どちらも私たちに欠かせない。人間の言語が、認識を基準にしあいまいで一貫性がなく、意味が不安定であるのに対し、数学の言語は、公理に基づき一貫性や意味の安定性を持つが100%正しく直感的に解釈することはできない。「地球の表面は球形である」と人間の言語では言えるが、数学の言語では、球形と言うなら、地球に山などあってはならないわけだ。「宇宙の『本』は『数学の言語で書かれ』ているだろう」とは、ガリレオの言葉である。一方、今日のAI時代のテクノロジーが数学的、抽象概念を積み重ねた上で成り立っていることは事実だ。ますます数学的思考が重要となっている事は間違いない。

著者は、「数学を使って直観を発達させる。数学は私たちを取り巻く世界の直感的理解を広げる」「数学的直観は完璧にはならないが、生涯にわたり、論理と数学的真理によって磨きをかけ、調整し、成長させることができる」「数学は宇宙の言語ではない。数学は私たちが指さして示せないものを明確かつ、正確に語るための言語である。推論と科学への取り組みを可能にする言語だ。数学は良きにつけ、悪しきにつけ、人間を人間たらしめている言語である」と呼びかけている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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