nemurenai.jpg都会に住み働く男女の、愛すべき人間模様を描く5つの短編。ちょっとありえないほど強い人間関係が、テンポ良くユーモラスに語られ心地よい。

「なにも傷つけないように、おやすみ」――深夜にチャイムが鳴り、「あの家にいたくないの。今夜だけ泊まってもいい?」。赤ん坊を連れてナミちゃんが駆け込んできた。「俺」は同じ施設で育って以来、一心同体であったマミちゃんの夫・智己とすぐ連絡を取る。「俺」の方は一緒にいたチカコと別れていた。

「明日世界は終わらない」――俺(竜朗)はキャバ嬢(綺子)が好き、そのキャバ嬢はゲイバーの男性バーテンダー()が好き、そして周は俺が好き3人は思いを果たせないが、いつも一緒に行動し、居心地の良さを失いたくないと思っている。「うちらって、ほんとはすごくかなしいんじゃない?でも失いたくなかった。あの居心地の良さを」「俺たちは、ほんとはすごく幸せだったのだ」。奇妙だが今の時代を捉えた絶妙な短編。

「不自然な大人たち」――志津と櫻子は中学生の時からの親友で、何から何まで全て真っ先に連絡し合う仲。見るからに憔悴しきっていた櫻子が「陽太が浮気したの。責めたら帰ってこなくなった。だからもう志津にも会えない」と言う。志津はは大学生の頃から、何人もの男と不倫を繰り返してきた。今も定期的に会っているのが3人も。「わかった。じゃあ、別れてくる」と志津は直ちに動く。こんな凄まじい絆があるとは

「家族の事情」――姉・杏子と弟・亜門は二卵性双生児。似てもいないし性格も違うが、心から補いあい助け合う。「自分には男を見る目がない」と姉が言うように、ほんとにダメ男ばっかりに付き合い、突き落とされ、疲れ果てる。とうとう「私の結婚する相手。亜門が選んで」と言われ、動き始めるが

「砂が落ちきる」――34歳の独身女・真野さん。「一晩あなたを買いたいんです」と男に突拍子もないお願いをする。5年ごとに目標を立てていて、「35歳までに処女を捨てる」がTo Do リストにあると言うのだ。2人の間に化学反応が起きて。この物語だけは他とは違って強い人間関係があるわけではない。だからこその話だが。

夜と男女に絡む短編集だが、その絆の強さは尋常ではなく、ありふれた話ではない。しかし、奇妙にハラハラさせ、心が通じ合い、感動的でさえある。新感覚の魅力ある作品。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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