ka-tenko-ru.jpg「これが最後の作品集になるだろう」と言う巨匠・筒井康隆さんの最近の25編を集めた作品集。いずれも8ページ程度と短い。しかしキレは抜群で鮮やか。右に左に、上下にぶん回される。極めて面白い。

最初の「深夜便」や「花魁櫛」――男と女。シャレが効いていて絶妙。男は鈍、女は不可思議。

「白蛇姫」や「コロナ追分」――ブラック・ユーモアの中の普通では言えないギャグ、不謹慎パロディー。巻き込まれて、ひどい替え歌をつい歌ってしまう。日本はどうなったの、そんな世界へ連れていかれる。最後の「附・山号寺号」も凄まじい。やばい現実を突きつけられもする。

息子さんの死に触れている「川のほとり」は寂しさや優しさが迫ってくる。「羆」――今年は人里に熊が出るが、こんな生き生きとした表現の童話だったら、映像にはるかに勝る。「楽屋控」や「プレイバック」ーー自分自身の事だから、人や物の本質を鋭角的に捉えてグサっとくる。「美食禍」――飽食の時代を時間軸を逆転させて切る。「離婚熱」――男には、一様に離婚熱というものがあって、なぜだかそうした実害のない不満だけで、離婚したくてしかたがなくなる時期がある。それはもう離婚熱としか言いようがない、灼けつくような離婚願望なんですよ。

「手を振る娘」――短編なのに、その世界を作り上げる見事さ。「最初におれを見たとき、なんで手なんか振ったんだろうね」。その店主の答え絶妙。「夜来香」――戦争が終わる上海の繁華街の喧騒の中にある孤独や寂しさと、「夜来香」の歌声。「塩昆布まだか」――100歳夫婦、こんななるなぁ!

「プレイバック」も「カーテンコール」も名だたる役者総出演。みんな生き生きと生きている。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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