doubutu.jpg動物たちは何を考え、何をしゃべっているのか――ゴリラ研究の霊長類学者・山極寿一さんと、1年に何ヶ月も長野県の森にこもりシジュウカラを観察し続ける鳥類学者・鈴木俊貴さんの対談。「おしゃべりな動物」「動物たちの心」「言葉から見える、ヒトという動物」「暴走する言葉、置いてきぼりの身体」の4章から成る。「動物は人間より貧しい世界に暮らしているのではない。同じ場所にいても、それぞが認識する環境は違う。動物たちは、人間とは違う能力を使って、それぞれに豊かな環境で暮らしているわけであって、決して人間より劣っているわけではない」「カラ類や類人猿のコミニュケーションは、それぞれが生息する環境で豊かに安全に暮らすために進化した。人類の言葉も進化の歴史を反映しており、もともとは多様な環境で小規模な集団が生き延びるために発達したものだ」「私たちの心身はまだSNSやインスタグラムに適応できていない。私たちの話で浮かび上がった人間の現初的で、本質的なコミニケーションを頭に描きながら、賢く言葉を伝える世界を作ってほしいと思う」と山際さんは言う。

シジュウカラは天敵の種類によって鳴き声が違い、ヘビなら「ジャージャー」、タカなら「ヒヒヒ」と鳴く。そして「ピーツピ(警戒して)」「ヂヂヂヂ(集まれ)」の二語を正しい順序で並べて仲間に呼びかけると言う。手話を学んだゴリラのマイケルは「お母さんは密猟者に首を斬られて殺されて、ボクは手足を縛られて、棒にぶら下げられて連れてこられたんだ」と飼育員に手話で語り始めたという。人間はすごいね、などと言ってる時代はもう終わりで、走るにしても、聴覚も嗅覚も、コウモリが超音波で空間の様子を把握できるなどの認知能力も、動物にできて人にできないことは山ほどある。動物たちの言葉は、環境への適応によって生まれる。シジュウカラは鬱蒼とした見通しの悪い森に住む鳥なので、視覚だけのコミニュケーションでは不十分で鳴き声を言葉に発達させたのではないか。言葉の起源は生存に直結する重大な情報のカテゴリー化だと言っている。動物たちは踊り歌う。音楽、ダンス、言葉によるコミニュケーションだ。

人は、直立2足歩行となって手を使い、ものを運び、ジェスチャーをし、踊れるようになる。森から出た人類は産む赤ん坊の数を増やし集団で育てるやり方を見出し、音声言語が進化する(多産化と言葉の進化)。そして「文字」と言う革命的な発明をする。文字は、時空を超えてメッセージを伝えることができる。文字を使う動物は人間以外にいない。

しかし今、人の世界では、言語の暴走が始まっている。情報通信技術の飛躍的発展は心と身体を置いてきぼりにし、バーチャル空間へと人を誘う。言葉は、たくさんあるコミニュケーション手段の一つに過ぎないはずだが、現代社会ではその地位が極端に高くなってしまっている。コミニュケーションでは、暗黙知とも言うべき、文字や文章では表せない情報がとても重要な役割を果たしている。特に「食と性」は言葉では表現できない。言語中心の社会、文字にならないものを軽視する社会になってしまっている。ネットやSNSの変化は早すぎ、私たちの心身が対応できていないのだ。仮想空間やAIには感情や文脈はなく、言語と論理によって成り立っている計算機に過ぎないのだ。

対談では、言語やテクノロジーは便利であること事実だが、ヒトが本来持っている共感の力を両立させることが大事だ。その答えは「身体性を忘れずに新たな社交を作ればいい」「会う、食事をする。テクノロジーを使って新しい縁をどんどん作ればいい」と言っている。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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