ahougarasu.jpg「所詮、人間というものは理屈ではどうにもならない、矛盾だらけの生きものだ」「人間は、運命に左右されるものだが、だからこそ、その運命と折り合って面白がって生きればいいではないか」「理不尽は社会につきもの。そのなかで下級武士でも、商家の跡取りでない次男や三男でも、強盗でも筋を通した立派な奴がいるものだ」――運命や業にさいなまれた男と女とその絡みを描いた精選された11編の名短編集。

「あほうがらす」――店も持たず、抱え女もなく、単独で女を客にとりもつ裏家業の蔑称が「あほうがらす」(ポン引き)。「鮒宗」の宗六は10年ぶりで、兄の万右衛門に出会う。厄介ものだった宗六だが、今は「どじょう鍋」など小さな店を営んでいる。その裏仕事が「あほうがらす」。兄の息子からの頼み事があって接触したいが、今までのことがあってできない。そんな時、「どんな稼業にも、ぴんときりがあるのだ。あほうがらすのうちでも、俺だけの芸をもつ者は、江戸ニゃあ5人といめぇ」という与吉から、兄が妾を囲っていることを聞く。「ほ、ほんとかえ、小父さん・・・・・・」「まあさ、行ってみねぇな」・・・・・・。「あっ」と万右衛門の驚愕は、顔面蒼白、失神せんばかり。息子の願いは叶うが、妾を恋しがる病床の兄は弟に最後の頼みをするのだった・・・・・・。あまりにも意外な展開だが、人間は矛盾撞着な存在であり、男女の関係も理屈を超えていることを、ユーモラスに描く。

「鳥居強右衛門」――私の地元・東三河の長篠の合戦での有名な話。一捻りあって、苦境の中にある若殿を見た瞬間、決めていた心と反対の「援軍が来る」と叫んでしまった話としている。

「火消しの殿」――忠臣蔵の悲劇の主人公・浅野内匠頭は、大変な節約家であったが、一方で「火消し」に奮闘する男たることを誇りとする「火消し」大好き人間であったと言う。極端な二面性を持つが、どこかでこの2つはつながっているようだ。興味深い作品。「元禄色子」――忠臣蔵の討ち入りを前にして、大石蔵之介は息子の主税に遊びの経験をさせようとする。「色子の情は、遊女よりも濃い」と言われるようだが、主税は陰間茶屋「玉水」に通い続け、相川幸之助に初めてにして最後の愛をかけることになる。

「荒木又右衛門」――天下無双、伊賀上野の36人切りの剣豪としてではなく、自分に与えられた運命を冷静に直視しつつ、時代の法律と定めの中で、どこまでも筋を通していく強靭な精神を持った男の姿を描く。

「男色武士道」――「尻奉公」の一言におとなしい鷲見左門は怒り、同じ殿様の小姓を務める千本九郎は助太刀を相手を倒す。殿様の男色の相手をつとめると言われるニ人の互いを思う清洌堅固な武士道精神が描かれる。「狐と馬」――ぼんやりして青鼻汁を垂らして、顔は長く背丈はずんぐりの横山馬之助に、狐が入り、やり手の男に一変する。出世もするが馬之助は慢心増長。狐が去り元に戻ってしまう。人間の驕りや慢心は怖い。コミカルに描く。

このほか「運の矢」「つるつる」「夢の茶屋」「稲妻」などがある。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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