方言学、社会言語学の篠崎晃一東京女子大学教授が選んだ212語。学生時代に愛媛出身の先輩が「風呂にはまる」と言って驚いたことがある。また宮崎県に行って「よだきー」がよく使われて、気候の良い宮崎らしいことを感じたこともある。東京の「肉まん」が大阪では「豚まん」であり、肉とは牛肉のこと。また方言ではないが、東京のエスカレーターには左側に、大阪では右側に立つこともいつも不思議に感じていたことだ。本書で、富山県では「おごってくれる」ことを「だいてくれる」と言い、「先生、だいてくれるんですか?」という恐ろしい言葉が書かれているが、富山の人に聞いてみると本当だと言う。紹介されている「離合困難(すれ違い困難)」は、現実にある標識だ。
愛知県の私は、授業の後の休み時間を「放課」と言うが、全国では「長休み、中休み」「大休憩、昼休憩」と言ってることを初めて知った。本書には出ていないが、私の東三河では、「じゃん」「だら」「行くまいか」が最も使われている方言で、洒落ていると思うのは、朝日がまぶしい時に「ひずるしい」と言う。「日出ずるらしい」からきたと言われている。お湯が「ちんちんに沸く」と言う。
「津軽じょっぱり」は「情張り」からきており、「土佐のいごっそう」「肥後もっこす」と並んで、"日本3大頑固"といわれていると言う。「うざったい」は、東京多摩地方の伝統的な方言のようで、小さなものがたくさん群がることを表す「うざる」から来ており、今の若者言葉とは意味がずれているようだ。山梨で「からかう」と言うのは、困難を打開するために知恵を出しいろいろ手をつくす、ということのようだ。京都の「おーきに」は「大きなり」が元の形で、程度の甚だしい様子で「おーきにありがとう」の後半が省かれていると言う。「佐賀のがばいばあちゃん」の「がばい」は、たくましいとか豪快なではなくて、「とても」というものだと言う。
どの方言もだんだん使われなくなっていると思うが、故郷に帰ると、やっぱりそんな言葉遣いになってることに気づくものだ。