清々しい青春小説ど真ん中。「何か意味がなくても好きなことに打ち込むということが、どうしても書きたかった」と著者が言っているが、その通りストレートに伝わってくる。
あの輝かしい春高バレー。その県予選の直前、明鹿高校バレー部2年生の宮下景は、高校のフェンスを乗り越えようとしていた女性を目撃、驚いて自転車が転び右足を痛める。女性は同級生の真島綾だった。それを隠したまま翌日の練習試合に臨んだ景は最終セットで足首靭帯を損傷、試合に出れなくなる。準々決勝で強豪の稲村東高校に惨敗する。景に代わって出場したのは、中学からのチームメイトで、退部を決意していた北村走一だった。
クラスメイトの話によると、真島綾は美術部に所属し、有名漫画雑誌「月刊ブレイブ」で、史上最年少の新人賞を受賞した女性だという。
春高バレー予選が終わり3年生は退部、バレー部は新体制となる。松葉杖も取れ動けるようになるが、なかなか調子は戻らない。新主将の塩野透、副将の尾久遊晴、チーム仲間の伏見梅太郎、辻谷恭平(マリオ)らの思いも交錯する。辞めるつもりであった北村も、景に代わって出るようになり、意欲を取り戻す。一方、真島綾はその後の作品が作れず、悩み続けていた。
「少しは自分に責任があるんじゃないか、って感じなかったかよ?」「俺たちが稲村東にぼこぼこにされてるとき。負けたとき。三年生が、遊晴が、俺が泣いてたとき、お前はどんな気分で見てたんだよ」と梅太郎・・・・・・。「私、罪を滅ぼしたいって思ってる」と真島綾・・・・・・。
そして八秒の意味。「笛が鳴ってから八秒以内にサーブを打たないといけないってルール」とだけ思っていたが・・・・・・。冬の合宿で、春高バレー直前の稲村東と練習試合をすることになって・・・・・・。
あぁ、青春時代。何かに打ち込み、悩み、淡い恋。現役医大生が描く真っすぐの青春小説。