hatarakite.jpg2040年の日本が直面する危機と"希望"」が副題。「2040年に日本では、1100万人の働き手が足りなくなる」――リクルートワークス研究所が、「日本社会が構造的な人手不足に陥るのではないか」との危機感のもとに調査・分析した結果だ。本書は人口減少のシミュレーションではなく、「労働需給シミュレーション」に焦点を当てる。つまり2040年の労働の需要は緩やかに増加(横ばいに近い)、労働供給(働き手、担い手)は大きく減少し、その差が1100万人というシミュレーションだ。そして「これまでの人手不足は、後継者不足や技能承継難といった産業・企業視点から語られてきたが、これから訪れる人手不足は『生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなるのではないか』という、生活者の問題として現れる」ことを示す。

2030年の労働供給不足の数は341万人、2040年が1100万人。結果的に、「輸送・運搬職や建設職、介護、医療等の生活維持に関わるサービスにおいて、その質を維持することが難しいレベルとなる」と言うのだ。しかも、「主要先進国の中で比較すると、日本の労働力率は高い水準にあり、より多くの人に労働に参加してもらうキャパシティは、ほぼ限界に達しつつある」「絶対的な労働供給数が足りないので、特定の職種の待遇改善をしても人の取り合いになるだけ」となる。

どうすればいいのか。それは「シニア」「女性」「外国人」の3つ。「シニア」――既に日本のシニア就業率は、25.1%で世界ダントツだと言う。そしてさらに「最も増加する85歳以上の人がどう働くのかという途方もない問題への挑戦を」と述べる。「女性」の就業率も、アメリカやフランスよりも高く国際的水準に迫っていると言う。ただ非正規が多く「質」への挑戦を述べる。「外国人」については「獲得競争に日本は勝てるのか」「外国人の若者が働きたいと思う国にならなくてはならない」と言う。

4つの解決策を提示する。「機械化・自動化(省人化は賃上げ、労働参加の拡大となる)」「ワーキッシュアクト」「シニアの小さな活動」「仕事におけるムダ改革」だ。本書では「ワーキッシュアクト」が重要な提起だ。「本業以外の活動が誰かを助けている」との認識だ。町内会・自治会、趣味・娯楽などを通じたコミュニティーへの参加、PTAや子供会、各種ボランティア・・・・・・。ランニングと防犯パトロールの組み合わせやインフラ点検などの実例が紹介される。交友関係が広がり、楽しい時間が過ごせる。それは「つらい労働」からの意識転換を招く。「楽しく」「誰かのためになっている」という新しい「働き方」の創造となる。「シニア」が収入は高くなくとも、負荷の低い「小さな仕事」に携わり、現役世代を助ける時代としたい。「企業のムダ改革」は、"ブルシットジョブ"が多いなか、さらなる徹底が大事だ。

これらに徹底して取り組めば、2030年の働き手不足の規模は28万人余となり、2040年では493万人余となると試算する。1100万人の半分以下となり、その間に、異次元の少子化対策や外国人労働者の受け入れ対策、デジタル田園都市など、社会構造自体の変革を進めることが大事と指摘する。それ以上に、労働供給制約を、「つらい労働」自体のあり方を変える機縁にしようと呼びかける。今の若者が、つらい労働を避け、休暇を求めて転職する様子を見るとき、本書の提案は極めて重要だと思う。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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