otonagaehon.jpg「絵本は人生の心の友」「大人こそ絵本を」と言い、絵本の世界を積極的に全国展開してきた柳田邦男さんの2006年発刊の感動的な本。「優れた絵本は、50年、100年と経っても、新鮮さを失わないものだ」――それどころか、人生経験が豊かになるにつれて、より一層内容深く味わえるようになる。人間の生と死、自然とともに生きる「いのち」の素晴らしさ、愛と涙、見えない世界の奥深さ・・・・・・。心から感動し、思索する時間を得た。

「心が砂漠のように乾ききった昨今の日本の大人――絵本の力は一人の人間の人生さえも変え得るほど大きく癒され、今日の生きる力を取り戻したという人も少なくない」「絵本は『心の基礎体力』をつけるのに役立つ、とても奥行きの深いメディア」「絵本は絵と言葉が共鳴し合うことによって、奥行きのある立体的な世界を創るメディアである」「絵本は子どもに読み聞かせをする時と同じように、ゆっくりと感情をこめて音読し、言葉と絵を味わいながら、ページをめくること。いつも座右に置き、暗誦できるくらいくり返し読むこと」と言う。

「ケアする人、ケアされる人のために」――「眠れない長い夜をどう過ごすか。夜を寂しく辛いものでなくする、何か良い方法はないものか。それは絵本」「(明かりが消えた真夜中)、くらやみくん、きみはどこに行くの? 明かりがつくと、僕は見えなくなるんだ。でも、ずっとここにいるのだ」・・・・・・。死んだ人は今どこにいるのだろうと私もいつも思う。宇宙生命哲学の世界に誘ってくれる。ガス室に送られる前に、ナチス・ドイツ軍の敗退によって解放され生き延びることができたフランクルの「夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録」。フランクルは「人間が過酷な限界状況に追い込まれた時、心の平衡を維持し得るかどうかは、内面的な拠り所を持てるかどうかにかかっている」「あの樹はこう申しましたの。私はここにいる――ここに――いる。私はいるのだ。永遠のいのちだ」と言う。そして写真絵本「わたしの庭」を紹介する。絵本「葉っぱのフレディ――いのちの旅」では死を怖がるフレディに対し、親友の葉っぱのダニエルが教えてくれる。「死ぬというのも、変化の一つなのだから、怖がることはない。葉は落ちて朽ちても、木の根から吸収されて木を育てる。"いのち"は、永遠に生きているのだ――と」・・・・・・。柳田さんは生と死について、次々と絵本を紹介し、そして語る。

「絵本は魂の言葉」――「星の王子さま」は愛することと、生きることの悲しみについて語った本。ユングの「意味のある偶然」を語る。「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」を引きつつ、「人間が生きるうえで、いちばん大事なもの――愛や、思いやりや心の絆や、心の持ち方、といったものは、モノとしては目に見えない。キツネの言うとおりだ」と語る。言葉のない絵本「アンジュール ある犬の物語」を取り上げ、「存在を無視されたものが求めるものはやさしい愛であることを語っている」と言う。育児放棄や虐待や親が子供と向き合わない日常を見ると、「バンサンの発するメッセージは極めて重要だ」と語っている。また「エリカ 奇跡のいのち」で「母の決心の瞬間を推測する子の想い」を語っているが、衝撃的だ。

「絵本の森を散策すれば」――「絵本や少年少女読み物をあらためて読むというのは、悲しみや喜びのきめ細かな感情を取り戻すこと、心の砂漠にオアシスをもたらすことにつながるはずだ」と、絵本が子どもの感情の芽生えとともに、大人に今必要であることを述べる。

最後に「絵本に月2000円を!」――「アフガニスタンの風景に魅せられて(『ぼくは弟とあるいた』)」「涙でできた憩いの池(『きつねのかみさま』『かたあしわだちょうのエルフ』)」「賢治・ゴッホと少年の心の旅(同じ37年の生涯だったゴッホと宮沢賢治の魂の振動と苦悩)」「戦場の中のサッカー・ゲーム(『オットー 戦火をくぐったテディベア』)」など素晴らしい絵本が紹介される。

本書では、感動的な80冊の絵本が推薦をされている。読みたくなり、何冊か注文した。ますます新鮮さを増す約20年前の著作。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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