jizokukanouna.jpg派遣先の会社でセクハラに遭い、男の方ではなく被害者・敬子が解雇される。その後、彼女は笑わないアイドル× ×とそのグループに夢中になり、<推し>の日々に没入する。なぜアイドル× ×に、真面目で目立たない敬子が惹かれたのか。この男社会の中で、媚びない、笑わない、挑戦する姿勢に惹かれたのだ。敬子の他に、「おじさん」が作ってきた社会の理不尽と戦う女性たち。カナダで同性のエマと暮らす妹の美穂子、敬子がいた会社で今も働き、あのセクハラ男を倒そうとする歩など、幾人かの女性が戦いに挑む姿を描いている。

「おじさん」は私(女性)を見下す。物のように見る。道を歩いたりしてるだけで性的な存在と見る。女性が怒ると「感情的になるなよ」と小バカにする。自分より低い存在だとマウントを取る。俺様の方が偉いんだぞと思っている。意味不明に威張っている。品がない、醜悪な「悪いおじさん」がいる。女性の中にも「おじさん」がいる。

問題は「おじさん」社会。もっと言えば「おじさんアリジゴク」が形成されてしまっていることだ。女性も流され、合わせ、つい媚びざるを得ない状況に追い込まれがちだ。アイドルはその中で形成される。しかし、アイドル× ×はそのなかで異質だった。

「今の敬子に実感があるのは、『毎日がレジスタンス』だ。抗い続けなければ、どの瞬間にも、『おじさん』の悪意に、『おじさん』がつくったこの社会の悪意に絡め取られてしまう。常に防衛するのが当たり前の『普通の生活』を日々送っている日本の女性たち」「日本社会は、常に女性に制服を課しているようなものだった。女性に『望ましい』とされる服装とメイクが社会通念として存在し、それが人生のどの段階に進んでも、彼女たちを縛った」と描く。

アイドル――「そうやって、女の子たちが成長してしまうと、大人たちは、彼女たちを『未熟さ』のままにすることができません。・・・・・・アイドルグループを運営する立場の人々は、新たに女の子を募集し、各地に新たなグループを作り、『未熟さ』のシステムを長持ちさせようとした」「韓国の女性アイドルは、同時期の日本のアイドルが求められていたような『未熟さ』とは無縁だ」「なぜ恋愛禁止だったかと言えば、アイドル体系を維持する大人たちにとって、女の子たちは商品だったからだ。商品が傷物になると売れ行きに影響する」「× ×たちの楽曲の主なテーマは、社会や同調圧力への反抗、社会における生きづらさ、息苦しさについてだった」のだ・・・・・・。

日本人の男性を基準にして考えられている社会、パワハラ、セクハラ、カスハラが問題となってる社会――。その中での女性の生きづらさと、息苦しさを、本当に自覚しなければならない。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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