zaisei.jpg「日本経済の再生プラン」が副題。財政政策と金融政策――。「財政政策の安定化機能、そして、金融政策におけるマネタリー・ポリシーは、ともに好況・不況の波を縮小するという類似の目標を持つ。かつては、財政政策・金融政策の役割分担には、一定のコンセンサスがあった」「抑制的な財政政策と機動的な金融政策の組み合わせは、1990年代から2000年代前半にインフレなき成長の時代をもたらした。・・・・・・このような世界の潮流のなかで、景気対策を主に公共事業によって行ってきた日本の経済政策は内外から強く批判されていく」。しかし、その常識はリーマンショックで、主要先進国が大規模な金融緩和によって対応して揺らぐ。さらにコロナ禍ではどの国も巨額の財政支出を行った。加えてロシアによるウクライナ侵略はサプライサイドの問題を深刻化させ、また産業間のばらつきへの対応として財政政策の出動となる。つまり現在は、「均衡財政主義や財政再建路線は、かつてのコンセンサスある経済政策指針ではなくなりつつある」のだ。今、日本の財政・金融政策に求められるのは、その「統合運用」と「高圧経済」だと言う。

「高圧経済」とは、経済に金融、財政両面から圧力を加え、経済を需要超過気味に運営することだ。そのことによって、労働者は失業状態から雇用され、雇用されている労働者は、より高いレベルの仕事に就く。労働者の能力増強が行われ、長期的な成長に導くことができる。高圧経済は、雇用の拡大、雇用の質上昇、資本蓄積の強化、R&D投資の拡大を通じて成長率を高める。「アベノミクス」「新しい資本主義」もこの方向性にある。現在、目標とした2%をはるかに超える物価上昇にあり、出口論が議論されるが、日本の物価高が世界のコロナ禍後の急性インフレとウクライナ侵略などによるエネルギー価格や穀物価格の上昇によるものであり、需要増による本来のデフレ脱却ではない。

「高圧経済論と履歴効果は同一の現象――需要は、自らの供給を生み出し、需要不足は供給能力自体を損ねるという現象を、別の角度から観察したものともいえる」「高圧経済論が妥当する状況、つまり総需要が過大である状況では、持続的な供給能力や潜在成長率の上昇がもたらされる。そして過小な総需要はこれらの長期にわたる停滞を招く。このような対称性を踏まえると、経済が『適切な範囲で』需要超過状態のまま推移するような政策運営が求められることがわかる」と指摘する。かつてのマクロの安定化政策は、総需要と供給能力をできる限り一致させることを目標とすべきだと考えられてきたが、「その常識は覆されつつある」と言う。しかし、「需要の不足を補い、むしろやや過大な需要水準を維持するために財政は拡張的に運用される必要がある。しかし、その財政資金を特定の産業に選別的に給付する、または税制優遇することは需要、過剰環境のなかでは、有害である可能性が高い」と注意を喚起し、中立的需要促進策を述べる。

「ちぐはぐな政策運用が日本の長期停滞を招いた」――日本は金融政策と財政政策を別に考え、それぞれアクセルとブレーキを繰り返した。物価高、超円安、株の乱高下、GDP 600兆円、賃上げ・・・・・・。そして人口減少・少子高齢化社会のなか、人手不足、社会保障増大、地方衰退などの構造変化。本書は、それらについても論及、今求められる「統合運用」「高圧経済」を経済政策・理論として詳細に解説する。 

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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