イスラム国よ 鎌田實.jpg

 「『イスラム国』よ、と心の中で呼びかけながら、この本を書き始めました」と書いてある。しかし、同時に「こちら側」にも呼びかけている。それは「侵略、戦争、貧困、格差、世界の構造が"イスラム国"的なものを生み出しやすくした」「暴力に対し暴力で制圧しようとしてきたことで、ますます非道な暴力が燃え広がり出している」「戦争は死者を生み、貧困を生み、そして貧困が憎しみと戦争を生む」「貧困を減らし、戦争をしないことが大事」「非暴力、人道支援という手段でいきたい」「非道な暴力に対抗するには"力"と"愛"、このふたつのバランスが必要だ。・・・・・・"力"よりも何十倍も大きな"愛"の手を差し伸べることが大切だ」・・・・・・。そして「聴診器でテロとたたかう」「一番大切なのは非軍事支援」という。


イラク戦争の停戦直後、イラクへ入って感じたことは「民生の安定が平和の礎」「早く生活を取り戻せるような支援を」ということ、そして鎌田さんの「力と愛のバランス」ということだ。


超インフラ論.jpg

災害の多発する脆弱国土・日本。大地震、集中化・激甚化する雨、火山噴火・・・・・・。防災・減災・老朽化対策・メンテナンス・耐震化は急務であり、インフラのストック効果も目に見えるようになっている。藤井さんは「我が国のインフラは決して一流と呼べる水準にはない」「東京一極集中と地方経済、ひいては地方消滅の危機をもたらしている問題の根幹には地方におけるインフラの停滞がある」「日本経済低迷の背後には、日本全体におけるインフラ政策の停滞がある」とデータを示し指摘する。


さらに、例えば東京一極集中の要因には、新幹線が東京に極端に集中するようにインフラ投資の偏在があるという。また、大阪と周辺地域を新幹線でつなぎ、「大大阪圏」をつくること。さらに太平洋ベルト集中構造を変えて、「北方・大交流圏」「北陸羽越・大交流圏」「中国四国・大交流圏」「九州・大交流圏」をめざすことを提唱する。あわせて交流の重要性・シビックプライドが地域にソフト面の交流をもたらすことを示し、「同じ財政支出を考えるなら、最大限にその財政を効果的に活用しようとするワイズスペンディングの姿勢が求められている」という。「地方が甦る"四大交流圏"構想」が本書の副題だ。


決戦 大阪城.jpg

慶長20年5月、大坂夏の陣が終わって今年は400年。「決戦!関ヶ原」の続編として、7人の作家が戦国最終決戦を描く。1600年の関ヶ原の後、家康の豊臣の力を削ごうとするしたたかさ、執念が際立つが、70歳を超える家康の焦りが強引さを増す。それをしのごうとする淀・秀頼と有縁の武将。敵味方が、差し手争いのように乱れ、疑心暗鬼のなかで生き残りをかけたのが「決戦!大阪城」だ。


葉室麟の「鳳凰記」は、皇室をめぐっての徳川と豊臣の思惑(家康と淀)を導入として大坂の陣を描く。木下昌輝の「日ノ本一の兵」は真田信繁(幸村)、富樫倫太郎の「十万両を食う」は大阪商人・近江屋伊三郎、乾緑郎の「五霊戦鬼」は大和口方面の先峰・水野勝成、天野純希の「忠直の檻」は、家康から叱責・疎まれながらも徳川家という巨大な檻から一生出られない松平忠直の鬱屈した感情を描く。冲方丁の「黄金児」は、ずば抜けた聡明さと超越した視点、高みに達した秀頼の境地を、伊東潤の「男が立たぬ」は、福島正守と坂崎直盛の生きざまを描く。関ヶ原とは全く違って、運命、定め、生きざま――それが大阪の陣だろう。


勝ち上がりの条件.jpg

「軍師・参謀の作法」と副題にある。組織に信頼される智恵者・戦略家がいるかどうか。まさに勝ち抜く要諦だ。


小早川隆景、黒田官兵衛、本多正信、勝海舟、大村益次郎、大山巌、秋山真之、児玉源太郎・・・・・・。そして真田昌幸・幸村、川上操六、井上成美。「大局観と自己認識」「願望と現実を見極める力」「名軍師は逆境に育つ」「レーダーとなる"反実仮想力"」など、実例をあげながら率直に語っている。


参謀に必要な能力――。磯田さんは「参謀には三つの能力、知識と発想力と洞察力とが必要だと思っている。しかもそれぞれ常人以上のレベルで」という。そして三拍子が揃った人間は少ないとしながらも、勝海舟の「目ン玉一つで探したとしても、人材なんてそこら中にいるよ」という言葉を付け加えている。


インフラストック効果.jpg

「新時代の社会資本整備の指針」と副題にある。冒頭には、私と冨山和彦さんの対談「見落とされてきた日本経済のエンジン」がのっている。社会資本の意義を、原点に立ち返って、経済理論から、歴史や効果から、本格的に論じている。


脆弱国土日本――大地震や台風・豪雨に加えて、インフラの老朽化が今後進んでいく。人口減少、高齢化、世界的な都市間競争が激化するうえに、エネルギー制約やICTの加速化がある。そのなかで国土と大都市・地方都市、そして国民生活をどう守り、どう創るか。国全体では財政健全化も重要。課題先進国日本のなかで、社会資本整備のあり方をどう考えるかだ。


昨今の首都高中央環状線の開通や圏央道、東九州自動車道、中国横断自動車道などの整備や開通、北陸新幹線の開業、首都圏外郭放水路の減災効果など、インフラ本来の「ストック効果」が目に見えるようになっている。経済理論、歴史、現状の情報やデータを示しつつ、フロー効果に偏らない社会資本の果たしている本来の役割「ストック効果」を提示している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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