テロリストは日本の「何」を見ているのか  伊勢崎賢司著  幻冬社新書.jpg国連PKO幹部として東ティモール暫定行政府の県知事を務め、シエラレオネでは武装解除を行い、アフガニスタンでは日本政府特別代表として武装解除を行ってきた伊勢崎賢司氏。それだけに全く学者の論評とは違う。現場の赤裸々な実態と武装解除等の実際の呼吸や間合いが伝わってくる。「グローバルテロリズムの震源地」のタリバン、アルカイダ、米国などの姿も生々しい。

グローバルテロリズムには、(1)インサージェンシーとしてのグローバルテロリズム(2)現場は先進国でIS的なものを標榜するホームグロウン・テロ――という2つの様相がある。グローバルテロリズムは、この2つの世界を自由に行き来する非常に厄介なものだと指摘する。「日本はもっとテロの脅威を自覚すべきだ」「日本には54基の原発が海岸線沿いにずらりと並んでいる」――。テロリズムは対岸の火事ではない。どう脅威に立ち向かうか。テロに対峙する憲法9条とは・・・・・・。かなり踏み込んで語っている。


人工知能と経済の未来  井上智洋著.jpg副題は「2030年雇用大崩壊」。今、最も重要な問題の一つは、IoT、AI、ロボット、第四次産業革命等々が、どの程度のマグニチュードで世界を激変させるか、ということだ。そのスピードの速さを思えば、政治は逸早く備えなければならないと思う。

第三次産業革命(パソコン、インターネット)を1995年とすれば、第四次産業革命(汎用AI・全脳アーキテクチャ)は2030年頃から助走が開始されて2045年には本格化、2100年頃に全脳エミュレーションの時代になるという。そして2030年頃を境にして、それ以前を「特化型AIの時代」、それ以降を「汎用AIの時代」と位置づける。汎用AIは、人間と同様に多くの知的課題をこなすし、経済構造を大きく変える。

「2045年までにAIが人間の知性を超える、には懐疑的だ。機械任せにすることができない程度にしかAIは発達しないだろう」「全脳エミュレーションの方は、国際条約で禁止して、全脳アーキテクチャ方式でのみAIを開発するようにした方がよい」「第四次産業革命に成功した国が、次代のヘゲモニー国家になる」「汎用AIが2030年頃から実現すると、人間の労働需要は減少していく」「全人口の一割しか働かない未来が来る(創造的、ホスピタリティの高い人間が働く)」「労働者の多くが雇用されず、汎用AI・ロボットが生産活動に全面的に導入される純粋機械化経済に移行する」「急速にあらゆる雇用が失われ、資本家の取り分は大きくなり、労働者の取り分は限りなく小さくなる」「そこで大事になるのはBI(ベーシックインカム)だ」・・・・・・。

具体的に減少していく仕事の例や、未来の生活、そして多くの学者等の論述を引きつつ、わかり易く解説・提言をしている。


いま 世界の哲学者が 考えていること.jpg大きな時代・社会の変革期。哲学的にこれをどう捉えるか。「問題の所在は」「いかなる意味をもち、最終的に何をもたらすか」――哲学的に考えるとは「根源的に」「トータルに」「広い視野と長期のスパンで」「人間の生老病死から」意味を問うことだ。

とくに2つの革命――IT革命(ポスト人文主義)とBT革命(バイオテクノロジー、ポスト人間主義)。それはルネサンス以降の近代社会のヒューマニズム(書物の時代と人間の時代)に根底的変革を迫ることになる。

「ポストモダン以降、哲学はどこへ向かうのか」「言語論的転回、メディア・技術論的転回、実在論的転回、自然主義的転回とは何か」「IT革命は人類に何をもたらすのか」「人工知能が人類にもたらすもの」「バイオテクノロジーは『人間』をどこに導くのか」「クローン人間・再生医療・神を殺した人間」「資本主義と格差・自由・グローバル化」「近代は"脱宗教化"の過程だったが、宗教は滅びるか、捨て去ることはあるか」「人類と地球環境、環境保護論の歴史的地位」・・・・・・。問題の所在、見取り図を、世界の知識人・哲学者の主張を整理・紹介しつつ示す。


クラウス・シュワブ第四次産業革命.jpg副題は「ダボス会議が予測する未来」。IoT、AI、ロボット、シェアリング・エコノミー、インダストリー4.0、第四次産業革命・・・・・・。社会の激変のなか、ダボス会議の創設者として世界の政治・経済を観察してきた著者が、その衝撃と未来を解説する。

今、進行中の第四次産業革命が経済や企業、地政学、国際安全保障、地域、都市等、社会に多様な影響を及ぼすことは明らかだ。少数の"スター"に桁外れの報酬をもたらし中間層を脱落させることで、雇用環境を激変させる不平等拡大、労働コミュニティ・家族・アイデンティティ破壊への脅威、経済指標の変質(モノの移動や量的指数から低価格・効率向上の経済指標への変化)、国際安全保障を一変させるサイバー戦争・ロボット戦争等の脅威・・・・・・。大切なのは、それらの大激変を見すえての「人間を中心に据えた、人間が優先される未来をつくる意思」「イノベーションと技術の中心に人間性と公益追求を据えて持続可能な発展を実現させること」だという。そのためには、複雑化、細分化、高速化されるハイパーコネクティビティ社会におけるリーダーには「状況把握の知性(精神)」「感情的知性(心)」「啓示的知性(魂)」「物理的知性(肉体・胆力)」がますます重要だと指摘する。

最後に付け加えられている具体的な事象、「ウェアラブル・インターネット」「ユビキタスコンピューター」「IoT」「住宅・都市」「自動運転」「ビットコインとブロックチェーン」「3Dプリンターと製造業・健康・消費財」「デザイナーベビー」などについてティッピングポイントと2025年までの予想が付加されており、興味深い。流れは速い。


認知症の家族を支える.jpgいまや"ガン"以上に"認知症"になったという衝撃は大きい。厚労省によれば、2012年の日本の65歳以上の認知症有病者は推計約462万人、2025年には約700万人で、高齢者の5人に1人が認知症の患者になるという。

認知症は"病名"ではなく"症状"。アルツハイマー病や脳血管障害、レビー小体型、前頭側頭葉変性症(ピック病ほか)といった原因となる疾患があり、それによって言語をはじめとする認知機能が低下・喪失し、生活力が失われた状態が続く"症状"だ。だから「治せるもの」と「治せないもの」があり、早期発見が大切となる。「ケアの最適化」と「薬の最適化」が重要であり、家族の「マネジメント力」によって改善の可能性のあることを指摘している。多量の薬を服用する「多剤併用」や「残薬」の問題点にも現場から厳しく迫る。「ケアと薬の『最適化』が症状を改善する」が本書の副題だ。

高瀬さんは、在宅医療を中心とした「たかせクリニック」を立ち上げ、現在は約350人の認知症の患者を診ている。認知症治療の最前線を、患者と家族に寄り添って具体的なあり方を提唱している。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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