男の不作法  内館牧子著.jpg若い頃は"ヤンチャ"をわざとしていても、だんだん普通になっていくものだ。「円熟」など簡単にできるものではないが、人生の失敗・諦め・不安・焦燥等々をひっくるめて経験して、相手のことを考えるようになるようだ。本書は、内館さんの周りで現実に感じたことを語っている。映像を見るようだ。他人を不愉快な気持ちにさせる男は結局、嫌われて損をする。

「上に弱く下に強い」「時間を守らない」「過剰に自慢話をする」「間接的に自慢する(山中教授の「高橋君の存在なくしてはiPS細胞の誕生は大幅に遅れた」は立派)」「公衆道徳を守らない」「家族を守る覚悟がない(虐待の加害者では実夫が多い)」「妻や恋人以外の女性をほめる」「『○○に似てる』と言う」「若い者に譲らない(木村正之介の知進知退 随時出處)」「プレゼントの意味をくめない」「無記名で強く出る(日本人の自己肯定意識の低さとストレス発散)」「空疎な言葉を並べる(政治家のこと)」「"らしくない"を演出する(確かに男にはそうした傾向があるある)」「××じゃないからわからない(こういう奴はいるものだ)」「思い出話に燃える(自分の黄金期に戻れるから)」・・・・・・。

「思い出と戦っても、勝てねンだよ」とは、プロレスの武藤敬司の言葉だという。


日本を殺すのは、誰よ!  新井紀子・ぐっちーさん著.jpg数学者でAIプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を指揮する新井紀子さん、投資銀行家で経済評論家の山口正洋さんが語り合い、執筆した勢いのある書。AI時代に対して、人口減少・少子高齢社会に対して、どう国・地方・各人が戦略的に取り組むかを語る。新井さんは滋賀県米原市の再生・創生を、「ぐっちーさん」は岩手県紫波町のオガールプロジェクトを現実に進めてきているだけに、具体的で熱い。

「急降下する日本を軟着陸させるには」「子どもに"多様性"を体験させる」「地域一番校を復活させる」「女性が活躍できる基盤づくり――0歳児から保育園に入園できるように、シングルマザーを大戦力に」「若者たちに投資を――奨学金の返済問題を考えよう、リベラルアーツが必要」「地元に住んで小さなビジネスを起こす――地方債の問題、福岡・尾道の例、公園がビジネスチャンス」「50歳以上のオジサンが生きる道」「これからの日本はトラスト――信用・信頼して暮らす、シェアリング」・・・・・・。いずれも表層的ではなく、ニーズや社会実装性を踏まえて論じられている。

AI・ロボットの時代――。それは労働が希少ではなくなる時代であり、真面目で健康な人もある日、職を奪われる時代。社会の隅々まで金を流す人が細っていき、経済は死んでいく。あまりにもそのスピードが速くその難問の解決はきわめて難しい局面に遭遇する。つまり資本主義をAI時代は根底から揺さぶることになる。人間の総合的智力、エネルギーが重要となってくるが、とくに大企業型でなく個人の方が対応できる時代となっていくことに着目したい。


妻のトリセツ  黒川伊保子編著.jpg脳科学者・黒川伊保子氏の「夫婦脳」「恋愛脳」「女の機嫌の直し方」をはじめ、「女はなぜ突然怒り出すのか」など女性と男性の脳の仕組みの違いから、男と女、夫と妻の上手な付き合い方を示唆する著作は多い。なかでも本書はきわめて簡潔でシャープに妻の不機嫌や怒りの理由を解き明かす。

テーマとなるのは「男性脳」と「女性脳」の本源的な違い。「女性脳は、右脳と左脳をつなぐ神経線維の束である脳梁が男性に比べて約20%太いので、生まれつき右左脳の連携がいい。右脳は空間認識や音楽的な感覚など"感じる力"を担当し、左脳は言葉や計算、論理的な考え方など"考える力"を担当する」「右左脳の連携のいい女性脳は、直感力にすぐれ、今感じている気持ちがすぐ言葉になる。目の前のものを舐めるように見るので、子どもの顔色のちょっとした変化なども見逃さない」「男性脳は奥行き認識が得意なので、空間認知力が高く、遠くや全体がよく見えるが、目の前の観察力は低い」「女性脳は"心の通信線"と"事実の通信線"の2本を使って会話をする(男性脳は事実の通信線のみで、"それ違ってる"といきなり結論)。妻の心の通信線、心根を肯定することが大事(気持ちを否定しないこと)。君の気持ちはわかるよ、が大事」「女性脳の最大の特徴は共感欲求が非常に高い。正義や結論でなく"わかる、わかる"の共感でストレス信号が沈静化する」「いくつになっても愛の言葉が欲しい女性脳」・・・・・・。

そして日本は、熟年離婚が急増しており(この人と一緒に今後の人生を歩んでいく自信がない)、日本人男性の心の依存度は1位が配偶者・パートナーで78.8%なのに、日本人女性は1位が子どもで65.0%だという。


日本の「中国人」社会  中島恵著.jpg日本に住む中国人が急増し、2017年末で約73万人、在日外国人全体(約256万人)の約3分の1を占める。短期や公務での滞在者を含め約87万人、日本国籍の取得者(帰化者)を含めると約97万人。2000年は約32万人だったから3倍。もう「不法滞在者が多い」などは昔の話、川口市や蕨市の芝園団地、横浜中華街などは中国人率が圧倒的に多い。しかもこの数年、中国企業は給料も上昇、自信に満ち、IT・キャッシュレス経済などは一気に進んでいる。当然、日本に住む中国人の意識も数年前とは激変しているが、本書は、その中国人は日本に来て、「どの街で、どのように暮らし、何を考えているのか」をルポする。

「なぜ1つの団地に集中して住むのか(安心できる、母国語で情報を得やすい)」「中国人が多い所には住みたくない中国人もいる」「北京・上海のマンション高騰。戸籍も複雑。日本は買いやすい」「日本に持ち込まれた"コミュニティ"の構造、血縁がなければ地縁に頼る」「駆使されるグループチャット」「アリペイとウィーチャットで巧みに商売展開」「勉強に駆り立てられる人々、人気の30分で名著のサマリー」「母国の変化についていけない――日本で抱く危機感」「全国から入学希望者の殺到する中華学校(横浜大同学校)、日本には中華学校が少ない、池袋の同源中国語学校」「ゆるすぎる日本の教育、厳しい中国の大学受験競争、中国の受験競争を避け日本に来る人も、子どもが宿題をやらなければ親のメンツが立たない」「広がる"越境EC"ビジネス」「マスコミを信じない中国人と信じる日本人」「北京ダックも日本と中国は違う」・・・・・・。

日本人と中国人は同じような顔でも違う世界に住み生きてきた。日頃から会社や学校で机を並べていてもコミュニケーション・ギャップは変わらないという自覚が足りない故に誤解を生む。"中国人"といっても中国は広大な国で、地域や都市、学歴、年齢など断層がある。1人が中国を代表するものではない。だが、競争の激烈な中国とゆるく優しい日本では疲労度も違うようで、どの国を選択するかという時代に突入したようだ。「真正面から彼らと向き合っていこう」と著者はいう。


5164HNxHG8L__SX341_BO1,204,203,200_.jpg中学時代の仲間が、50歳になって偶然に再会する。青砥健将も須藤葉子も離婚等もあって今は一人暮らし。人生経験も重ねてきた二人は互いを思いやり、また惹かれていく。大人の恋愛――。しかし須藤は厳しいガンとの闘いの日々となる。青砥は彼女に寄りそうが・・・・・・。

日常の現実のなかで、透きとおった心の通い合いが精緻に描かれ、「平場の月」という表題に納得する。絶妙な筆致、渋さも加えられた大人の恋愛の距離感、幸運な人生とはいえないが屈折しない姿勢、生きる哀しみの共有・・・・・・。心にしみ入る素晴らしい大人の恋愛小説。

プロフィール

太田あきひろ

太田あきひろ(昭宏)
昭和20年10月6日、愛知県生まれ。京都大学大学院修士課程修了、元国会担当政治記者、京大時代は相撲部主将。

93年に衆議院議員当選以来、衆議院予算委・商工委・建設委・議院運営委の各理事、教育改革国民会議オブザーバー等を歴任。前公明党代表、前党全国議員団会議議長、元国土交通大臣、元水循環政策担当大臣。

現在、党常任顧問。

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