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2018年 私の3冊

2018年12月25日

「昭和の怪物 七つの謎」 保阪正康 著 講談社現代新書 880円

「AI vs.教科書が読めない子どもたち」 新井紀子 著 東洋経済新報社 1500円

「リズムの哲学ノート」 山崎正和 著 中央公論新社 2200円

明治150年の今年――。西洋文明への羨望と脅威から始まった明治は、昭和の敗戦に帰結し、経済的豊かさと哲学不在の今日へと至る。保阪正康氏の「昭和の怪物 七つの謎」は、歴史の急所、生死の瞬間、決断を抉り出す。歴史の主人公の思想・哲学そして性格や交友関係など、人物像を探るなかで、重要決断に至る思考の回路と瞬間を鮮やかに解く。

新井紀子さんの「AI vs.教科書が読めない子どもたち」は、急進展するAIの未来と限界を示しつつ、だからこそ人間のもつべき価値と教育が重要であることを痛烈に示す。AIは徹頭徹尾、数字だけでできており、計算機。人間の知能の営みはすべて論理と確率、統計に置換できない。それは「意味」を記述する方法がAIにはないからだ。しかし、今の中高生を調査すると教科書を正確に理解する「読解力」が驚くほど欠けていることを警告する。

そして今年、文化勲章受賞の山崎正和氏の「リズムの哲学ノート」。宇宙のリズム、生命のリズム、心拍・呼吸、舞踊のリズム・・・・・・。森羅万象のリズムの構造から、宇宙論、生命論の本質に哲学的に迫る。精神と肉体、主体と客体など西洋哲学史に貫かれた一元論的二項対立を乗り越え、メルロ=ポンティやベルクソンの身体論を踏まえながらも、その身体の具象的な側面やリズムの動態の仕組みに踏み込む。「すべて知ることは喜びを伴うが、リズムを知ることの歓喜は次元を異にしている」という。

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