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シリーズ東北の課題(下) 【公明新聞・東北版より転載】

2014年7月27日

問われる現場力―人口減少といかに向き合うか
交流人口増やし東北を活性化
国土交通相
太田昭宏氏


国土交通省は今月4日、2050年を見据えた国土・地域づくりの理念を示した新たな国土形成計画である「国土のグランドデザイン2050〜対流促進型国土の形成〜」を発表した。集落が散在する地域では、日常生活に欠かせないサービスを集めた「小さな拠点」を各地に形成するほか、都市間連携の在り方や観光促進による交流人口増などの戦略が盛り込まれている。未曽有の人口減少社会といかに向き合っていくべきか。今回は、グランドデザインの考え方などに関する太田昭宏・国土交通相(公明党)へのインタビューとともに、交流人口増をめざす東北の先進的な取り組みを紹介する。


『集約と連携の強化で安全・安心確保』


――日本の人口は2008年をピークに減少局面に入った。グランドデザインを策定する上で、前提とした"国の姿"とは。


太田昭宏・国土交通相 われわれの予測では、日本の人口は50年の段階で約9700万人まで減少し、現在の居住地域の約6割で人口が半分以下に減ると考えている。さらに、三大都市圏を除けば、人口30万人以上の都市は現在の61から43に減ると想定している。こうした前提を踏まえて策定を進めてきた。


――提言の中には、地域や都市の在り方に関する言及もあるが、その考え方とは。


太田 人口減少に少子高齢化、そして厳しい財政状況という制約下において、いかに国民の安全・安心を確保していくべきか。限られたインプット(投入)から、どれだけ多くのアウトプット(産出)を得られるかという発想から、グランドデザインのキーワードは「コンパクト+ネットワーク」とした。
 集落が散在する中山間地域を例に挙げれば、診療所や商店など日常生活に欠かせない施設を住民が徒歩やバスで通える範囲に集約し、周辺地域とネットワークでつないだ「小さな拠点」を全国5000カ所に形成する。この「小さな拠点」が担う役割は、日常生活の「守りの砦」にとどまらない。道の駅などと連携し6次産業機能を付加することで、新たな雇用を生み出す「攻めの砦」にもなる。


――都市部での戦略については。


太田 行政や医療、福祉、商業、教育、そして居住機能などを都市の中心部や生活拠点に誘導して再整備を進めていく。さらに、複数の地方都市がネットワークを活用することで、一定規模の人口を確保し、行政機能だけでなく民間企業や大学、病院なども含め、相互に都市機能を分担し連携する「高次地方都市連合」の構築も欠かせない。

『日本海・太平洋の2面活用型国土へ』


――東日本大震災の爪痕が残る東北では、被災地だけでなく日本海側でも人口減少が深刻化している。


太田 震災発災直後、太平洋側のネットワークに甚大な被害が生じ、東北と関東を結ぶネットワークも機能不全に陥った。その際、活用されたのが日本海側の道路や鉄道、港湾だ。
 戦後、わが国は太平洋ベルト地帯を中心に経済発展を遂げてきた。しかし、近年は東アジア諸国やロシアの経済活動が活発化している。日本海側の都市が、こうした「ユーラシアダイナミズム」と向き合う必要がある。
 防災や経済活動の両面からも、日本海側と太平洋側の2面をフル活用していく中で、東北の復興、そして活性化へとつなげていきたい。


『訪日旅行者らの足を東北の地へ促す』


――人口減少と向き合う上で、交流人口を増やすための観光促進も不可欠だ。


太田 その通りだ。世界の国際観光市場は、アジア地域を中心に大幅に伸びており、推計では、10年の9億4000万人から30年には18億人に倍増する見込みだ。
 その後も、50年へ向けて、アジアを中心とする新興国のさらなる経済成長が想定されている。これらの国際観光需要を積極的に取り込んでいきたい。試算によると、訪日外国人旅行者11人、宿泊する国内旅行者であれば26人を呼び込むと、その効果は定住人口1人当たりの年間消費額に相当するという。観光政策を促進させることは、それだけ地域経済への影響が大きい。
 人口減少が進む中で、地域を活性化させるために「交流人口の増加」は不可欠だ。そして、東北には、国内屈指の豊かな観光資源が各地に広がっている。
 現在、訪日外国人旅行者は、東京周辺にゴールデンルートが集中しているが、今後は、地方空港の積極活用をはじめとする環境整備を進め、地方への訪問客を増やしていく。確実に地方経済の活性化につなげ、人口減少社会に対応していきたい。

【公明新聞・東北版より転載】

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