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気象庁が先月17日から運用スタート

2021年7月14日

線状降水帯の情報を発信
豪雨見据え、早めの避難促す

kisyoutyou.jpg気象庁は先月17日から、線状降水帯の発生を伝える「顕著な大雨に関する情報」の運用を開始した。土砂崩れや洪水の要因となる線状降水帯を"見える化"することで、事前の備えや避難行動につなげるのが狙いだ。気象庁の「防災気象情報の伝え方に関する検討会」で委員を務めた東京大学大学院の片田敏孝特任教授のインタビューも交え、豪雨災害への備えを考える。

■降水量、3時間100ミリ以上などで発表

同情報は、「3時間の積算降水量が100ミリ以上で面積が500平方キロメートル以上」「土砂災害警戒情報、または洪水の警報基準(警戒レベル4相当)を超過」など、線状降水帯の発生によって幾つかの基準を満たした場合に都道府県単位で発表される。

線状降水帯は、2017年の九州北部豪雨や18年の西日本豪雨など、近年の豪雨災害の要因となってきた。発生情報をキャッチすることができれば、早めの避難行動や備えにつながる可能性がある。

同情報では、災害の危険度が急激に高まっていることを呼び掛けるとともに、実際の雨域については、気象庁ホームページの降水ナウキャスト(雨雲の動き)から確認できる。先月17日の運用開始後、活発な梅雨前線の影響により同29日に沖縄県で初めて発表され、すでに5都県で発表された。

これまで豪雨の際に発表されてきた「記録的短時間大雨情報」は"1時間で100ミリ"など短時間の数値だったが、線状降水帯情報は数時間の降水量などから判断する。気象庁によると、過去数年のデータでは、今回定められた線状降水帯情報の発表基準を満たすケースの約6割で記録的短時間大雨情報が発表されていなかった。

■熊本豪雨で氾濫の3時間半前に線状降水帯が発生

ちなみに死者67人、行方不明者2人を出した昨年7月の熊本豪雨では、線状降水帯が長時間停滞し、球磨川が氾濫する3時間半前には、同情報の発表基準を満たしていた。自治体の避難指示や記録的短時間大雨情報よりも早かったことになる【図参照】。

熊本県人吉市に住み、豪雨で自宅が浸水するなどの被害を受けた白石一夫さん(84)は、線状降水帯が発生していた深夜から「いつもとは違う、異様な雨だ」と感じていた。

球磨川の氾濫後、家屋が浸水し、2階へ避難しているところを救助された。白石さんは、「今振り返れば、あれが線状降水帯かと思う。今後は、発表される情報などを参考に、早めの避難を心掛けたい」と語る。

■公明、予測精度の向上を政府に訴え

「発生情報は第一歩。実況から予測への転換をめざしていく」(気象庁の担当者)と話すとおり、防災・減災の観点から今後は予測精度の向上が不可欠だ。

政府の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」には、25年度に向け、線状降水帯の発生情報を「半日前」から提供できるよう、技術開発に取り組むことなどが盛り込まれている。

土石流による行方不明者の捜索が続く静岡県熱海市を12日に視察した菅義偉首相は、「(線状降水帯については)解明されていない部分がたくさんある」と述べ、メカニズムの解明や研究開発を前倒しで進める意向を示した。

公明党は、新たな防災・減災・復興政策検討委員会(委員長=石井啓一幹事長)を中心に、予測精度の向上を訴えてきた。昨年10月の参院代表質問では、山口那津男代表が「早期避難に直結する線状降水帯の観測・予測技術の向上は喫緊の課題」だと指摘し、政府に対策を求めていた。

■危険な災害、「共助」も重要に/東京大学大学院 片田敏孝特任教授

線状降水帯が危険な災害につながるということが社会に浸透する中で、避難行動の促進要因として、発生情報を発信することは非常に意義がある。

近年の災害は激甚化し、兆候が見えないものも多い。自治体による避難情報だけでなく、線状降水帯などの気象情報を生かして、適切な避難行動をとることが大事だ。その際、ハザードマップ(災害予測地図)を確認し、土砂災害や河川氾濫の危険性を見極めておくことや、地方で導入されている「防災隣組」のように、近隣数軒で避難するルールを事前に決めておく共助の取り組みなども重要だ。

一方で、土石流に見舞われた静岡県熱海市の例では、1時間の雨量は最大27ミリにとどまったため、線状降水帯や記録的短時間大雨情報などは発表されていない。情報を過信しすぎることなく、早め早めの避難を心掛けてほしい。

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