参院選(7月10日投票)の公示(6月22日)を前に、各党の公約・政策が出そろった。このうち、立憲民主党や日本共産党、日本維新の会、国民民主党などの野党が、こぞって掲げているのが、消費税率の5%への引き下げだ。
しかし、十数兆円に上る税収が減る分を賄う現実性のある財源を示していない。というのも、消費税を5%から10%に引き上げた増収分は、基礎年金の国庫負担や受給資格期間の短縮(25年→10年)、幼児教育・保育の無償化、大学など高等教育の無償化といった社会保障に活用されているのである。
実現可能な代替財源もなく消費税率引き下げを掲げる各党の無責任さには呆れるばかりだ。識者も「消費税減税を掲げた政党も複数あるが、一度下げた税率を戻すことができるのか。その間、消費税収を充てている年金の国庫負担分などはどうするのか」(16日付「読売」で菊池馨実・早稲田大学法学学術院教授)と厳しく指摘する。
しかも、野党各党はこれを物価高騰対策としているが、効果も疑わしい。税率引き下げには法改正が必要で、実現には一定の時間がかかる上、値札の貼り替えやシステム改修など、事業者にのし掛かる事務負担は計り知れない。
さらに、近く税率が引き下げられるとなれば、買い控えが始まり、消費が低迷することは明白だ。
余りに出来の悪い政策に立憲の党内からは異論が広がっているようだ。「経済政策としても、選挙対策としても、悪手だ」(山内康一前衆院議員)との声が上がり、「私も同じ考え」と公然とツイッターに投稿・拡散する現職参院議員も出始めている。
消費税は社会保障を維持するための貴重な財源だ。それを選挙目当てに"引き下げ"を叫ぶのは、国民生活をないがしろにするだけでなく、少子高齢化という日本が抱える重大課題の解決にも逆行するものである。(之)